昨今の連続する防衛省スキャンダルは、友敵関係の曖昧な冷戦後の世界で、緊張を解かれた隊員が、ウチ・ソトの別を見失い、弛緩の限りを尽くした結果であろう。ギャディスは、近著("Surprise, Security, and the American Experience", 2004)で「ヒトは、あるニュースをいつ、どこで耳にしたかを覚えている。それが歴史となるような大事件の特性である」(拙訳)と述べる。そして、真珠湾攻撃や9.11同時多発テロのような「衝撃的な出来事」の「記憶」がいかにして、米国の大戦略に影響を与えているのかを探る。しかし、「冷戦」という一見「平和」な時代、衝撃的な事件こそ少なかったが、規律と秩序が維持された時代の「記憶」こそが、自衛隊員が語りつぐべき教訓ではあるまいか?