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2024-12-21 12:06
(連載1)アメリカの「近隣窮乏化政策」
岡本 裕明
海外事業経営者
近隣窮乏化政策という言葉をお聞きになった方もいらっしゃるでしょう。自分をよくするためにお隣を追い詰めて貧しくするという経済の用語ですが、主に二国間における貿易などについて述べることが多いと思います。特に自国の為替を安くすることで輸出ドライブをかけるような場合で使われます。もしもこの近隣窮乏化策を貿易や為替に限らず、もっと広義な意味で使うとしたらどうでしょうか?先日、アメリカの中央銀行にあたるFRBが定例の政策決定会合を行い予想通りの0.25%の利下げを行いましたが、2025年の利下げ見通しが年4回から2回に減ったことを受け株が暴落しました。特にダウ平均は10日連続安で50年ぶりの事態となっています。
少し前、私はアメリカはブラックホールのようだ、と申し上げたことがあります。世界のマネーを吸い上げるという意味です。吸い上げるのでアメリカの景気はよく見えます。投資が活発になり、雇用も好調、賃金もうなぎのぼり、まさに独り勝ちの様相です。パウエル議長が本日の記者会見で25年度の金利政策についてより慎重を期すとする点について「トランプ氏の就任だけが要因ではない」と述べています。これが実は私が以前から気になっていた点なのです。
トランプ1.0頃からの世界経済を見てみると伸び盛りの中国をトランプ氏は経済制裁でガツンと言わせました。経済制裁が国家の経済成長に大きな影響を与えるのは以前から行っていた対イランやロシアの状況を見ればその効果は実証されており、中国と言えどもその罠からは逃れられませんでした。おまけにコロナが追い打ちをかけた形になりました。習近平氏はイデオロギーで巨大国家をリードしようとしていますが、そんなことでできるわけがありません。ある高尚な国際社会問題に関する書籍の中で習近平氏は凡庸で特段優れた能力を持った人物ではないと書かれています。中国はトランプ1.0の際にアメリカに負け、その傷が癒えない中で2.0を迎えるわけで経済だけに限れば戦々恐々の事態にあるのです。
もう一つの主要経済エリアである欧州経済の不振が世界経済のバランスという点で影を落としています。欧州経済がなぜ不振なのか、これを議論するとこの紙面では全く収まらなくなるので私見を一言だけ述べると、欧州各国における歴史的な労働硬直性と社会保障制度、移民/難民問題が重くなっているうえに、EUの括り、特にシェンゲン協定が欧州各国が本来持つ強み弱みを均質化させ、平凡な集団国家に変えてしまったというのが私のたった一言で述べる欧州経済弱体化の道であります。(つづく)
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