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2022-08-03 20:23
(連載2)緩衝通貨としての円:通貨政策で問われる国家観
大井 幸子
国際金融アナリスト
都市の商人たちは団結して戦い、封建領主から貿易の独占権を勝ち取りました。その時に、ローマ戦士ブラボーがスヘルデ川を牛耳っていた巨人アンチゴーヌの手を切り落として川へ投げたという神話をもとに、この銅像が建てられました。自由と自治を勝ち取った誇らしげな歴史を象徴しています。アント(巨人の手)を切り取って投げる(ワープ)行為そのものが都市の名になっています。中世の自由都市の自治権の確立には、封建的かつ専制的な支配と農奴からの解放があり、都市に住む人は「市民」という身分になれました。市民は代表を選び、政治を行い、自らが民兵として都市を自衛し、ここに自治が成立しました。
しかし、当時の都市国家の経済的繁栄は重商主義に基づいており、一時的な繁栄を極めたが、やがて歴史から消えて行きました。製造業に基づいた生産力の向上、産業資本家と資本主義(拡大再生産とイノベーション)の台頭による富の拡大、そして、民主的な近代国家の成立過程で、より大きな市民社会の中に取り込まれていったのです。(参考:齋藤英里著『資本主義と市民社会』、岩波文庫、 2021年)。
今、第二次世界大戦後に構築された国際秩序に大きな構造変化が起こっています。21世紀に台頭してきた中国をめぐり、米中対立軸の真っ只中に日本は置かれています。通貨戦争において、中国は米国債の保有を減らし続け、その分、日本円が通貨戦争の前線で戦っています。
私が経済史を取り出してここで強調したいことは、一国の通貨の信用の裏付けとして、自主独立の裏付けが必要だという点であり、米国の安全保障に守られた日本の「経済大国」の幻想と戦後レジームが終わる中、日本自身が目下の「Zeitgeist 時代精神」をどのように理解し、世界に経済以外の「大国」となる資質をどのように示せるのか。哲学、大局観、歴史観、世界観、国家観といった国民精神そのものが問われています。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)緩衝通貨としての円:通貨政策で問われる国家観
大井 幸子 2022-08-01 19:57
(連載2)緩衝通貨としての円:通貨政策で問われる国家観
大井 幸子 2022-08-03 20:23
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