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2022-07-06 21:42

(連載1)対露制裁が米ドル基軸体制を衰退させる可能性について

真田 幸光 大学教員
 現行の世界の通貨の基軸は、米ドルであり、モノやサービスの経済的な価値判断は米ドルでなされており、世界のモノやサービスの決済は米ドルでなされていると言えます。そして、その米ドル決済は米国内にある米銀でなされていくことから、その構造上、米国は米国に居ながらにして世界のモノやサービスの動きをモニタリングできるようになっているのです。これが、米国の覇権国家としての力を更に強めていると言えます。
 
 また、今回のウクライナ紛争により、米英はこの米ドル基軸を使いロシアに対する制裁を強化していることはご高尚の通りであります。そのロシアは世界が必要なモノを輸出している国です。ロシアからそうしたモノを輸入せざるを得ない国もいれば、ベラルーシのように喜んで輸入する国もいます。ロシアと交易する国は、国際金融筋の推計では約50カ国、即ち、世界の約四分の一の国々がロシアと交易していると見られます。これまで米ドル基軸に従い米ドル決済をしてきたロシアは、英米の制裁に反発するかのようにロシアからモノを買う国はロシアの通貨・ルーブルで支払うように強制し始めていますが、これは米ドル基軸という強固な構造への抵抗と言えます。
 
 こうしたことから、これまでの米ドル決済の比率は下がる一方、ルーブル決済の比率が上がるであろうとの見方は強まっています。短期的にはルーブル買いの動きが顕在化する可能性があり、長期的にはルーブルの決済通貨としての地位が向上するとも見られています。
 
 そして、もしロシア・ルーブルが米ドル基軸に挑戦する状況となれば、中国本土も一帯一路の国々などを対象にして人民元決済を要求していくことになるでしょう。もし、そうなれば、米ドル基軸体制はむしろ衰退するのではないかとの見方まで出てきています。(つづく)
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(連載1)対露制裁が米ドル基軸体制を衰退させる可能性について 真田 幸光 2022-07-06 21:42
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