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2022-03-15 21:32
(連載1)ウクライナ危機で露呈する戦後安保の致命的な欠陥
倉西 雅子
政治学者
ウクライナに対するロシア軍の侵攻が現実のものとなった今日、人類は、第二次世界大戦後に構築されてきた安全保障体制の致命的な欠陥という問題に改めて直面しているように思えます。
凄惨を極めた第二次世界大戦の経験は、国際聯盟に代る国際連合という凡そ全世界の諸国を網羅する新たな集団的安全保障体制を誕生させ、さらに70年代以降にあっては、リスク管理の名の下で核兵器の開発・保有等は厳しく制限されてきました。しかし、こうした平和への努力は、その制度的欠陥によって裏目に出たとしか言いようがないのです。
先ずもって、国連にあっては、国際の平和が脅かされる事態が発生した場合(国連憲章第7章)、常任理事国であるアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、及び中国に対して事実上の拒否権を与えています。このことは、常任理事国が平和を破壊する侵略行為を働いた場合、国連を枠組みとする集団的安全保障のシステムが全く機能しないことを意味します。今般のロシアによるウクライナ侵攻はまさしく同ケースに当たり、たとえ、緊急事態の発生を受けて安全保障理事会が開かれたとしても、ロシアによる拒否権発動により、安保理決議が成立する可能性はゼロと言っても過言ではありません。国連の制度設計に内在する同欠陥は、既にその発足時から認識されていましたので、国連が機能不全となる事態の発生は、当初から織り込み済みであったとしか言いようがないのです。
この文脈からしますと、国連憲章の第51条において加盟国に認められている個別的、並びに、集団的自衛権は、国連の欠陥を補う条項として理解されるのですが、超大国が抜きんでた軍事力を有するようになった現実を直視しますと、同条文によっても全ての加盟国の安全が保障されるわけではないことは明白です。兵力のみならず、軍事テクノロジーにおいても遅れをとっている中小国が、ハイテク兵器を有する常任理事国でもある超大国の侵略を防ぐほどの防衛力を備えることは実際には不可能であるからです。(つづく)
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