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2021-10-19 22:27

(連載2)財政政策を検証しない政治のツケ

中村 仁 元全国紙記者
 麻生前財務相は「物価2%上昇まで基礎的財政収支の黒字化目標を凍結するとの高市氏の主張は、放漫財政だ」と、批判しています。麻生氏の批判のほうが正論です。麻生氏は裏で動き始めているでしょう。松野官房長官は「矢野氏は私的な意見として述べたものだ。(進退については)現時点では差し控える」と発言しました。財務次官の肩書で寄稿したものが「私的な意見」であるはずはない。こういうのは政治的な誤魔化しです。政治、世論に訴えたい本音を矢野氏は吐いた。
 
 岸田首相は「議論をした上で、意思疎通を図り、政府・与党一体で政策を実行していく。方向が決まったなら協力してもらう」と述べました。矢野氏も「決定が下ったら従い、命令は実行する」と、書いています。財務次官の直言、正論に対し、頭に血が昇り、進退問題に発展させると、選挙の材料を探している野党の思うツボです。
 
 岸田首相自身も、株価の動揺を見て、公約の「金融所得課税の強化」を引っ込めました。「新しい資本主義」を目指す軸のひとつにするつもりでした。金融所得への課税が一律20%(源泉徴収)と低く、金融所得が多い富裕層の有利な税制になっています。
 
 所得格差の拡大の一因であり、格差が広がる米国でも見直しの議論があります。問題は、現在の株高はそうした金融所得税制に支えられており、総合的な判断が必要です。見直しすれば、株価への影響は必至です。それを意識した上で、見直しを表明したのかと、思っていました。株価が動揺したので、あわてて先延ばししたとなると、岸田首相の思慮の浅さを感じてしまいます。(おわり)
 
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(連載1)財政政策を検証しない政治のツケ 中村 仁 2021-10-18 19:03
(連載2)財政政策を検証しない政治のツケ 中村 仁 2021-10-19 22:27
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