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2021-10-12 21:14
(連載1)自由貿易主義とグローバリズム
倉西 雅子
政治学者
今日、多くの人々は、グローバリズムは自由貿易主義の延長線上にある、あるいは、前者は後者の拡大版であると考えているようです。実際に、両者を明確に区別する政治家は少なく、二国間、あるいは、多国間で自由貿易協定や経済協力協定などの通商協定を締結するに際しても、古典的な自由貿易論を以って相互利益を国民に説いています。しかしながら、両者は、似て非なるものなのではないかと思うのです。
EUなどを見ましても、1957年のEEC設立以来、‘財’、‘サービス’、‘資本(マネー)’、‘人(労働力)’といった移動要素は同列に扱われており、この表現からしますと、主として貿易を意味する‘財’と他の3つの要素との間に然したる違いは見受けません。貿易に際して各国が設けている関税が撤廃されますと、‘財’が国境を越えて自由に移動するようになりますので、人々は、自由貿易=関税障壁の撤廃とするイメージを持つようになります。そして、このイメージから類推して、グローバリズム=非関税障壁の撤廃と見なすようになるのです。言い換えますと、同構図により、財と他の3つの要素の自由化における質的な違いが見え辛くなったと言えるでしょう。
しかしながら、移動には、それを決定する’主体’というものが存在しているはずです。財の移動、即ち、貿易の場合には、売買、即ち、交換を行う双方が決定者となります。つまり、双方の経済圏における相対的希少性に基づく価値の違いにより相互利益を生み出すのが貿易のメカニズムですので、輸出入取引を行う双方の事業者の意思の一致がない限り、貿易は成立しないのです(もっとも、輸出入のバランスが保てないと貿易収支の不均衡問題が生じ、貿易の継続が困難となる…)。
相互利益が最も確かなのは、相互に自国の’特産品’を輸出品とするパターンですが、経済格差が存在する場合には、相対的に低価格となる産品(リカード流に言えば、生産性において比較優位性のある商品…)が輸出品となります。何れにしても、関税撤廃を意味する自由貿易主義は、基本的には、’交換’の概念で説明されましょう。(つづく)
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(連載1)自由貿易主義とグローバリズム
倉西 雅子 2021-10-12 21:14
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倉西 雅子 2021-10-13 14:09
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