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2021-08-18 21:44
(連載2)アフガン情勢は冷静に深層の観察を
倉西 雅子
政治学者
ソ連軍の撤退後は内乱状態となりますが、ムジャヒディーンの腐敗も追い風となって勢力を急速に拡大したのがパシュトゥン人を中心とするタリバンです。そして、タリバンを主軸とする政権が誕生すると、アフガニスタンの社会はテロリズムによってイスラム原理主義に染め上げられてしまうのです。
その後、アフガニスタンのタリバン政権は、恐怖政治を敷く中、かの9.11事件の首謀者とされたウサマ・ビンラーディンを匿ったことから、アメリカから宣戦布告を受け、アフガニスタン戦争を闘うこととなります。同戦争の敗戦により、同国では、比較的自由主義的なカルザイ政権が誕生しましたが、タリバンは完全には掃討されずに残存し、反政府組織として米軍、並びに、アフガニスタンの国軍との戦闘を繰り返し、今日の首都奪還に至るのです。
アレキサンダー大王の遠征の最東端こそ同地域でもあったのですが、アフガニスタンは、地政学的に大国、あるいは、国際勢力の思惑が交錯する地点にあります。このため、19世紀にあっては英露両勢力が‘グレート・ゲーム’の名の下で角逐し、君主制の時代から常に大国の干渉を受けてきました。かつて米国の支援を受けたタリバンもその一例と言えましょう。加えて、タリバンの背景には、隣国のパキスタンをはじめ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦のみならず、ISといったイスラム原理主義勢力との繋がりも見えます。イスラム帝国の復興を夢見るイスラム原理主義はその思想において超国家性を有しますので、少なくない戦闘員もイスラム過激派国際ネットワークからリクルートされているのでしょう。そして、何よりも注目すべきは、タリバンこそ、アフガニスタンにおける麻薬栽培拡大の張本人である点です。ここに、国際麻薬ネットワークの存在、あるいは、麻薬利権の問題も垣間見えるのです。
以上に、簡単にアフガニスタン情勢について述べてきましたが、今般のタリバンの再登場につきましては、どこか不自然さが漂っております。ロシアや中国は、一早くタリバン政権に対して事実上の政府承認を与えておりますが、その一方で、民主党が政権の担うアメリカは、今のところ、アフガニスタンからの撤兵は正しい判断であったとする姿勢を崩しておりません。今後の展開につきましては正確に予測することは難しいのですが、おそらく、米軍撤兵見直しによる泥沼化、あるいは、完全撤兵による中ロ勢力(全体主義勢力)の拡大といったシナリオが想定されます。何れにしましても、デジャヴ感があることは否めません。歴史において、同じようなシナリオが手を変え品を変え繰り返されているのです。そうであるからこそ、今般のアフガニスタンにおける事変につきましては、近代以降の世界史の表裏を深く洞察しつつ、慎重なる見極めが必要なように思えるのです。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)アフガン情勢は冷静に深層の観察を
倉西 雅子 2021-08-17 20:35
(連載2)アフガン情勢は冷静に深層の観察を
倉西 雅子 2021-08-18 21:44
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