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2021-07-23 07:09
(連載2)現代中国の盲点三論:最近の「中国脅威論」の虚実
松本 修
国際問題評論家(元防衛省情報本部分析官)
同記事の「キモ」(要点)は、有力なシナリオとして、米軍介入前48時間(2日間)の内に①サイバー攻撃による台湾当局・軍、電力などの重要インフラのシステムに侵入、これらシステムを麻痺・混乱させ偽情報を流して台湾住民を混乱させる、②ミサイルや無人機、特殊部隊の破壊工作で総統府や国防部など台湾の中枢、基地や空港を攻撃して台湾周辺の制空・制海権を押さえ、中国人民解放軍の上陸ポイントを確保する、③これら上陸ポイントに部隊を投入し、台湾本島を一気に制圧するという「速度戦」(短期決戦)を提起したことである。
以上、最近の「中国脅威論」の概要をみてきたが、小生はこれら米軍が想定する中国の台湾侵攻対処作戦、これに伴う「台湾有事シナリオ」が、いかなる作戦計画(OPLAN)に基づくものかという疑問を自衛隊在職時代から一貫して抱いてきた。以前、巷間でさんざん語られた対北朝鮮南侵対処計画「5027」(これ以外にも5029、5030があるという)が存在しながら、殊に対台湾(これに関連した日米等対処案)に関しては米国文献や中国側資料をいくら漁っても存在を全く確認出来ないからである。
ただし、①コードナンバー「50✖✖」がアジア太平洋地域における作戦計画であること、②米国本土、周辺の中南米地域等における作戦計画を例えば「10✖✖」と想定すると「20✖✖」~「40✖✖」「60✖✖」は欧州、ロシア(これらをまとめてユーラシア大陸)、中東、極地等における作戦計画になること、③これら大前提となる、地域別(あるいは地域連関)のOPLAN無しに米軍が、日米あるいは米韓という二国間共同作戦を想定、計画しないことは考えられる。
最後に、最大の問題点は既に言い尽くされたことであるが、「脅威」を論じる場合には「意図」(何をしてくるか)と「能力」(何ができるか)の有機的な分析が必要となる。小生は、近年の「中国脅威論」は能力分析が過多で、意図分析が希薄だと感じている。例えば、麻生幾氏の論稿の最後にいう中国の台湾侵攻で「注視すべきは来年の北京冬季五輪の数か月後」は、中国共産党の次期党大会の予定を全く無視した「警告」であろう。また、能力分析でも、目まぐるしい「中国軍の近代化」という表面上の事象が過大評価され、対処作戦中に日米等が乗じうる肝心の「弱点」分析が疎かになっているのではないか。こんな現状では、ただ「脅威のインフレーション」を巻き起こすだけで「中国人民解放軍は本当に強いのか」という疑問には永久に答えを出せないであろう。「誰も皆、情報を重要と言うが、誰も情報を重視していない」という言葉を小生は常時噛み締めている。(おわり)
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投稿履歴
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