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2021-07-14 21:32
(連載2)イランの反米大統領当選で世界情勢は悪化する
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
候補者が7人に絞られた点で、今回当選したライシ氏の勝利がほぼ確実となったために、イラン国内では大統領選挙にもかかわらず白けたムードになってしまった。それは過去最低の投票率という形で現れた。そして無風のままライシ大統領が選出されたのは既報のとおりだ。
アメリカはバイデン大統領に代わり、また、イランがライシ大統領に代わった。6月3日からイランの核合意に関する交渉は止まっており、アメリカは核合意に関して不参加になったままだ。ライシ新大統領は核合意に関しては交渉を重視し成功させたいと考えている。しかし、イランの場合はすでにIAEAから危険レベル(核兵器を生産できる、つまり平和利用の核を超えているという意味)で核が扱われているとみなされており、米国を納得させるのはここに手を付けずには厳しい。また、ソレイマニ将軍なきあとの革命防衛隊の態勢の立て直しをどうするのか、ハマスなどに連携しているゴドスをどのように動かすのかもライシ新大統領を見極める上で注目に値する。ゴドスが何を作っているかわからない地中の核実験施設も米国は注視している。
アメリカから見れば、何よりも中国共産党との関係が深く、隠密、情報公開なしに密接な繋がりを持つイランで「反米強硬派」の大統領が選出されたということは大きな問題である。アメリカにとっては重要な同盟国であるイスラエルのネタニヤフ政権が倒れ、内閣が変わったのもタイミングが悪かった。アデルソン氏やネタニヤフ体制を失ったことは、ある意味で中東における橋頭保が揺らいだともいえる。今回のイラン大統領選以降、中東情勢は不安定になる可能性は十分高いだろう。
さて、世界はこのようにかなり目まぐるしく動いているにもかかわらず、日本のメディアはいまだにオリンピックの是非とかコロナ政策とかの報道ばかりをしている。オリンピックを報道するにしても、ライシ新大統領が来日するのかとか、世界の首脳や幹部が集まるこの五輪外交の場をどのように考えるのかという観点で全体を見ることのできる報道が見当たらない。日本の報道の質の低さに落胆せざるをえない。(おわり)
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(連載1)イランの反米大統領当選で世界情勢は悪化する
宇田川 敬介 2021-07-13 21:46
(連載2)イランの反米大統領当選で世界情勢は悪化する
宇田川 敬介 2021-07-14 21:32
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