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2021-04-17 20:33
(連載2)ミャンマーの春は遠い
岡本 裕明
海外事業経営者
もう一つはロヒンギャ問題は宗教問題ともいえ、同国の主流である仏教に対してロヒンギャのイスラム教が対立関係になったことは根深いものと言えましょう。それゆえに隣国のイスラム国家であるバングラディッシュに難民として向かったわけです。これでは中国における新疆ウイグル問題と大差なく、欧米諸国がミャンマーを積極的に支援できる大義名分が存在しなくなってしまいました。
一方、同国を取り巻く地政学的問題はより複雑です。一つは中国の影響であり、軍部に対して中国、およびロシアが支持をする体制となっています。これは中国の政策方針からすれば願ったり叶ったりであり、そう簡単にこのチャンスを手放すことはないでしょう。他方、インドにとっては仏教国という意味での取り込みはあるでしょう。同様に隣接するタイも同じ仏教という切り口はありますが、こちらも軍部が実質的に政権を握っていることで軍部同士のつながりが生まれています。国連管理は中国、ロシアが反対するので不可能であり、案外、綱引きの厳しい試練はすぐに終わりそうにないというのが私の理解です。
私の見る国際情勢は今のミャンマーを救う手立てを無くしてしまったとみています。それは外交関係があまりに複雑で、各国のインタレストをグループ化し、判断をしにくくしてしまったのです。更には中国主導によるアセアン諸国内部の分裂工作も進み、中国派とミャンマー不干渉派グループに分かれています。その間、ロシアはミャンマー軍に兵器を供与します。欧米は制裁方針、中国、ロシアは軍部支持となれば泥沼化していると断言してよいでしょう。
今さらの話ですが、アウンサンスーチー氏に頼り切った同国の今日までの国政がそもそもの失策でした。一方、欧米諸国は「民主化」という切り口と海外留学の経験から英語ができる彼女をうまく取り込んだことが今回の顛末ではないでしょうか?タイがクーデターから形の上での民政になるのに5年(実質は今でも軍の支配下)かかったことを考えればミャンマーの春は当面お預けにしか見えません。(おわり)
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