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2021-04-07 11:15
(連載2)制御不能に向かう世界の財政金融
中村 仁
元全国紙記者
米国では、特定買収目的会社(SPAC)といって、未上場企業の買収を目的とする投資会社が熱狂的な関心を集めています。「株式市場に投機熱の典型的な症状がみられる。桁外れの過大評価に爆発的な価格高騰、無節操な新株発行の熱に浮かされている」との警告もあります。リーマンショック後から続く金融緩和、財政膨張にコロナ危機対策が上乗せになっています。膨大なマネーが株価を押し上げ、下がりそうになると、またマネーが国家から注ぎ込まれ、財政は悪化する。
米国の連邦政府債務はGDP比で130%、世界大恐慌時を超えました。日本は米国以上の悪化で、GDP比で2倍、先進国の中で最悪です。中央銀行が国債を際限なく購入するので歯止めがかかりません。悪化する国家財政と異常な株高という均衡はいつまでも保たれるのでしょうか。最もひどいのは日銀でしょう。国債は発行残高の4割、ETF(上場投信)を通じた株買いで株式の時価総額の7%は日銀が保有しています。10年間も実現できないのに「物価上昇2%を実現する」と言い続け、その出口戦略については、日銀総裁は一言も発言しません。この「恐怖の均衡」(日銀の金融緩和・財政膨張と株高・資産高)は破綻しないで済むのでしょうか。無理をしまいと思えば思うほど、泥沼の深みにはまっていくのです。
このような状態から抜け出すには「日銀の保有国債を帳消しする」しかないのか。ピケティ氏らの悪魔の選択は、「そのような状況に追い込まれる可能性はある」という意味で、示唆するものがあります。財政はそれで助かっても、日銀は破綻同然となります。財政と日銀は一体ですから、日銀の破綻は国家財政の破綻になります。膨大な額の国債の償還を免除すれば、株、国債が暴落し、インフレが起きるからです。
国はそれで逃げ切れるかもしれません。膨大な損害、犠牲を国民に押し付けて、国は存続する。太平洋戦争の敗戦で起きた破綻の再現です。菅首相が日本学術会議の人事案件で口にした「総合的、俯瞰的に考える」べきことの本当の意味は、こういうことなのだと思います。竹中平蔵氏は「アーリー・スモール・サクセス」と、首相に助言しました。今ころ、後悔していることでしょう。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)制御不能に向かう世界の財政金融
中村 仁 2021-04-06 21:41
(連載2)制御不能に向かう世界の財政金融
中村 仁 2021-04-07 11:15
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