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2020-12-17 17:15
(連載2)‘縦割り行政の打破’の懸念材料
倉西 雅子
政治学者
政府は、民主主義を持ち出して官僚組織に対して自らの優位性を主張することはできても、菅政権そのものが国民に対して改革を断行するほどの民主的正当性を備えているとは必ずしもいえないのではないのではないでしょうか。しかも、アメリカの大統領選挙が示すように、今日では政治指導者の選出過程が選挙民の厳しい目に曝されており、日本国にあっても、国民の多くが今日の選挙制度や首相が選ばれるプロセスに対して疑問を抱くに至っています。
第3に指摘し得る点は、‘縦割り行政の打破’は、内閣(政権)への集権化を意味しかねないという問題です。この問題は、第1に指摘した複雑性への対応とも関連するのですが、並列型から垂直型への転換は、行政機構にあってトップ・ダウン式を実現することを意味します。言い換えれば、内閣による上からの政策決定、あるいは、指令が行政の末端にまで伝達され、それが忠実に実行される体制です。行政改革の結果、日本の行政府に特定の政党を中心とした中央集権体制が出現しないとも限らないのです。
そして、第4の問題点とは、行政情報にデータ管理に関するリスクです。‘縦割り行政の打破’には行政のデジタル化が伴いますので、国民への行政サービスの情報を含め、各種情報も中央サーバーにおいて収集・管理されることでしょう。今日のITのレベルを以ってすれば、サイバー攻撃のみならず、内部操作も可能ですので、セキュリティーを考慮すれば、一元化のみが必ずしも望ましいわけではありません。海外勢力に日本国の情報が漏洩したり、逆に、外部から干渉を受けたりする可能性も否定はできないのです
かつて、首府である江戸は、江戸城を中心に敢えて渦巻き状に都市設計されましたが、その理由は、直線的な設計では敵軍の直進を許してしまい、外部からの攻撃に対して脆弱であったからです。効率性よりも安全性を優先したわけですが、このような先人の知恵には学ぶべきところもあるように思えます。中央集権体制ほど外部勢力の‘乗っ取り’には好都合という側面もあります。日本国の政府並びに国民は、‘縦割り行政の打破’に邁進するよりも、現代の複雑性への対応やセキュリティー面をも考慮した、より高い次元での改革を目指すべきではないでしょうか。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)‘縦割り行政の打破’の懸念材料
倉西 雅子 2020-12-16 15:35
(連載2)‘縦割り行政の打破’の懸念材料
倉西 雅子 2020-12-17 17:15
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