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2020-10-06 17:44
(連載1)低金利が招く所得格差拡大
岡本 裕明
海外事業経営者
アメリカの中央銀行に当たるFRBがその政策決定会議、FOMCで2023年末まで、かつ2%のインフレが起きるまで低金利の長期化を打ち出しました。一方、低金利下の中、世界で所得格差が浮き彫りになったのも事実です。所得格差と低金利の関係について考えてみましょう。アメリカが本格的な超低金利になったのはリーマンショックの衝撃の最中の2008年11月でした。同年1月には政策金利は3.00%であったものの徐々に下がり、同年秋に世界経済が激震に見舞われた際には金利もつるべ落としとなり、11月には0.25%になりました。その後、この0.25%という超低金利は実に7年も続き2015年11月にイエレン議長(当時)がようやく金利を上げ始めたのです。ところがその上げ基調をイエレン氏からバトンを受けたパウエル議長が更に継承したもののトランプ大統領から烈火のごとくその金融政策に不満をぶちまけられ、19年5月までの2.50%をピークに下げに転じます。そしてコロナとなった今、再び、0.25%という「振り出し」に戻り、リーマンショックに始まった長期超低金利時代の第2幕が切って落とされているわけです。
低金利となるとなぜ、所得格差が生まれるのでしょうか?一言でいうと銀行預金から生まれる金利収入がなくなる一方、ある程度余裕資産がないと株式投資などに入り込めないからです。日本の場合をみると30代の方の金融資産のポートフォリオは78%が現預金と保険資産です。株式は15%程度。40代や50代になると金融資産の80%以上が現預金と保険資産で株式は7%程度しかありません。ほぼ金利がゼロの時代に8割近い資産を全くお金を働かせずに大事に抱え込んでいるのです。
この背景にはいくつか理由があります。一つにはそもそもの金融資産の絶対額が少ないことがあります。平均では30代で530万円、40代で700万、50代で1200万円程度とありますが、中央値で見ると30代は240万、40代が365万、50代が600万円という水準です。会社勤めをされている方の場合、その人の生涯収入額は社会人になった瞬間から概ね見えています。あとは支出との兼ね合いで増やす方もいますが、それでも絶対額はどれだけ会社で優秀な成績を収めても同期よりゼロが一つ多い収入を得ることは100%ありえないのです。となるとある程度の年齢になると生涯設計を立て始めますので余計コンサバになり、しっかり貯めて老後に備えるという行動に出やすくなるのです。「アリとキリギリス」の話ではありませんが、自分だけはキリギリスにならないように、と思うわけです。
ここで4-50代で株式の割合が7%程度と30代の15%から半減しているように見えますが、総金融資産額がほぼ倍増しているので実は絶対額でみると変わらないということになるのです。かつて、日本では投資を増やそう、という働きかけが何度となく行われましたが見事に失敗していることが分かると思います。なぜか、といえばリスクマネーに資産を配分するほど月々の家計収支が十分ではないのです。ならばリスクを取るより減らない銀行預金の方がまだましと考える人が圧倒的に多いのです。(つづく)
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