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2020-09-09 22:42
(連載2)香港国家安全法違反で捜査共助要請を受けたら
緒方 林太郎
元衆議院議員
まず、香港国家安全法は、中国本土の国家安全法を下敷きにしたものです。ただし、香港国家安全法の特徴として、法律の域外適用が強烈だという事です。私は中国語が出来ませんけど、以下の文章が「香港の永住権を持たず、香港に住んでない人間」であっても、この法律の適用があるという事は大体分かります。中国本土の国家安全法にはこの域外適用の規定は無さそうですので(違っていたらすいません)、この点は香港国家安全法特有の事情として考慮する必要があります。
【香港国家安全法第三十八条】
不具有香港特别行政区永久性居民身份的人在香港特别行政区以外针对香港特别行政区实施本法规定的犯罪的、适用本法。
したがって、日本国内で、日本人が「FREE HONG KONG」という旗を掲げて、駐日中国大使館前で示威活動をしていたら、法技術的には香港国家安全法違反である可能性が高いです。そういう規定を設けておいて、「将来、中国に入国しようとした時、香港国家安全法違反で拘束されるかもしれないぞ」という恐怖感を世界中に広く与えるのが目的でしょう。かつては、国内法の域外適用と言えばアメリカの十八番でした。適用の恣意性が高いこと、罰則の決め方も結構恣意的であること等から、アメリカへの批判は強かったです。日本企業はかなり苦しめられました。一方、アメリカ司法の長い手で国際犯罪を捕捉したこともありますし、国際的な経済制裁として機能することで抑止に繋がっている部分もあります。そして、香港国家安全法を見ていると、今後、中国が国内法の域外適用をやって来る萌芽がここにあるかもしれません。
法律論的には、日本国内で「FREE HONG KONG」の活動をしている方に対して捜査共助要請が来ることも想定しなくてはなりません。ただ、私は別に条約の運用停止とかやらなくても、条約に則って共助を拒否すればいいと思います。そもそも、政治犯は共助の対象にはなりません。そして、恐らく香港国家安全法の規定の大半は、日本国内では犯罪に当たらないと思いますので、双罰性の基準によって弾かれるでしょう。なので、今やるべきは次の2点だと思います。①香港国家安全法で罰せられる行為は日本の法令では犯罪に当たらないことを確認する。②政治犯や双罰性の無い行為に関する共助に応じないことを確認する。(注:条約上は拒否「できる」となっているだけなので、拒否「する」ことを確約させる。)これが確認できれば、条約に則って共助に応じないことが担保されるのです。条約の運用停止とか終了とか大騒ぎせずに、スマートに「うちは、条約の規定に基づいておたくの香港国家安全法をベースにした刑事共助はやりませんよ。」と宣言するだけです。
一度、国会の閉会中審査での外務委員会を開いて、対外相でこの手の質疑をして、上記のような政府の方針を取り付ける努力をしてはどうかと思います。その時、仮に外相がゴニョゴニョ言ったら、次の手を考えればいいという事です。ゴニョゴニョ言いそうな気もしますが、条約の原則だけを振り翳して共助拒否について明確なコミットメントが無いと国内的な反発は避けられないでしょう。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)香港国家安全法違反で捜査共助要請を受けたら
緒方 林太郎 2020-09-08 20:51
(連載2)香港国家安全法違反で捜査共助要請を受けたら
緒方 林太郎 2020-09-09 22:42
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