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2020-04-01 20:11
(連載1)新型コロナとの共存
中村 仁
元全国紙記者
新型コロナの感染者が世界全体で60万人を突破、死者は3万人を越えました。トランプ米大統領は「自分は新型コロナと闘う戦時の大統領と思っている」と、また安倍首相は「経済対策はかつてない規模にする。経済をV字型に回復させる」と、大げさな言い方をしました。誇大な表現は政治家の習性であり、それが職業になっている人たちです。有権者を引き付けたいための口ぶりに引きずられず、何が起きているかを冷静に見つめなければならないと思います。
NYダウが急騰したかと思ったら急落し、株式市場の方向感覚が定まりません。「二番底がある」いや「2万ドルの攻防」とか、その時々の相場の講釈は登場するにしても、深い底流のところをどうみるかに目を向けた解説がもっとほしいのです。そんな時、国際保健学、医療人類学、熱帯感染学を専門とする医師で、長崎大教授の山本太郎氏が「コロナは現代的なパンデミック(世界的な大流行)」(読売3/29朝刊)と、警鐘を鳴らしました。「研究者はウイルスの種類や特性を知べ、原因を突き止めようとしてきた。しかし、最近思うに、実は逆ではないか。流行するウイルスを選び出し、パンデミックへと性格づけるのは社会のほうだ」と。
「社会にはいつも様々なウイルスが入り込もうとしている。たまたま社会がそれに適した状態になっていると、ウイルスが入り込み広がっていく。都市に人々が密集し、地球の隅々まで交通網が発達し、人々が移動、交流する。現在の社会のあり方がパンデミックの格好の揺りかごになっている」と。そういう社会が形成されるのが先で、それが拡散するウイルスを生む。考える順序が逆、なるほど。
グローバリゼーションによるヒト、モノ、カネ、旅行、都市化の動きが加速し、国境を越える。ウイルスの拡散に適した状態が生まれたことのほうが先だというのでしょう。トランプ氏は「中国ウイルス」と誹謗しました。そのウイルスに拡散するチャンスを与えたのが米国発のグローバリゼーションとすれば、中国ばかりを責めることはできない。批判する対象は単純ではない。新しいウイルスが発生したとしても、現代の社会経済システムに適しないならば、甚大な被害をもたらすほどは伝染しないはずです。「ただ、悪いことだけではない。ひとたび感染すると、人間には抵抗力がつく。感染者が抗体や免疫を持てば、それ以降は、季節性か散発的は流行ですむ。」集団免疫論という考え方です。政治家はそういうと、責任回避と批判されるから「パンデミックと闘う戦時の大統領だ」と、大言壮語する。戦う相手は、現代社会のシステムのあり方でもあるのです。(つづく)
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(連載1)新型コロナとの共存
中村 仁 2020-04-01 20:11
(連載2)新型コロナとの共存
中村 仁 2020-04-02 11:23
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