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2020-03-26 12:10
(連載1)陰りが見える露土友好関係
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
トルコの近代史はどのようなものであったか。トルコの歴史は、露土戦争、クリミア戦争と、イスラム世界とキリスト教世界の戦争そのものであった。そこにロシアという強大な敵が小アジアに手を出したことで、イギリスやフランスなどはトルコを利用してロシアの封じ込めを行ったのが、トルコを巡る近代の大きな図式だ。
現在のトルコは、旧オスマン帝国の版図に強い郷愁を持ち、イスラム教の庇護に関心が強い。対するロシアは、トルコ近辺へ覇権主義的な感性で黒海・地中海を狙っている。よって露土関係の発火点は目下、黒海とボスポラス海峡ということになる。黒海は、トルコ人にとって豊富な漁場であるだけではなく、スラブ人にとっては凍らない海というチャームポイントを備えている。
ここで重要なのは、黒海の出口、ボスポラス海峡を押さえなければ、エーゲ海・地中海に出ることができないチョークポイントであるということだ。この海峡はイスタンブールがその両岸を県域としており、今ではモントルー条約に従わずしてロシアが自由にすることはできない。歴史的に、この海峡と黒海をめぐる戦いが古くから行われており、両国の国民は互いに神経質だ。
近年でも、2015年11月24日、シリア戦争で出撃していたロシア軍機をトルコ機が撃墜する事件が起きた。2016年6月28日には、イスタンブールにあるアタテュルク国際空港でロシア・ウズベキスタン・キルギス出身の三人が銃を乱射し、犯人を含む48人が死亡、238人が負傷した。このような出来事の繰り返しで両国関係は見通しがつかないものとなっていたが、2016年7月に反エルドアン大統領の宗教家ギュレンによるクーデター未遂事件が発生したことで両国関係は一変した。ギュレンの亡命を受け入れたオバマ大統領(当時)とエルドアン大統領の関係が悪化した一方で、トルコはロシアに接近し、現在では露土関係は同盟に近いのである。もちろん「近い」というところが大きなポイントになる。(つづく)
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(連載1)陰りが見える露土友好関係
宇田川 敬介 2020-03-26 12:10
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宇田川 敬介 2020-03-27 14:01
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