リカード(自身)の比較生産費説は、比較優位のある産業に特化して(自由に)国際貿易をすれば世界の生産量が増加することを主張するが、国際間の比較優位構造の変化は考えていないようである。そのため少なくとも東アジアの途上国は、「農業国のままではいたくない」「(現在)比較優位はなくとも、工業化したい」と叫び、「リカードは間違っている(Ricardo is wrong.)」と批判の的にしてきた。上のチャン氏は、現在の先進国が途上国だった時期に実際採用してきた諸政策を調べ上げ、日本や新興経済群が採用してきた諸政策と比べると、輸入代替や幼稚産業保護の政策は共通していることを発見した。そして、「現在の先進国が言うことではなく、してきたことを見るべきである」と主張するのである。東アジアの経済発展については研究途上である。東アジアについての多面的多角的な研究のさらなる展開を期待したい。