2018年、長崎と天草の潜伏キリシタン関連遺産が世界遺産に登録された。その副産物だといえるが、近世から明治期の途中までキリスト教が禁止されており、日本ではキリスト教が公式に存在しなかったことが世界中に知れ渡ることになった。ヨーロッパで正統派経済学というとき、たいていはキリスト教経済思想に基礎をおくものを指している。この意味で、日本の経済学は、ヨーロッパでいう正統派経済学ではないことに議論の余地はない。そしてスミスの political economy (経済学の英語での古い呼び名)もキリスト教を帯びているので、「アダム・スミス『国富論』は、日本の経済学の基礎ではない」とするのは、正しいと信じている。さらにフランスで、「経済学の父」の話をすると、(スミスより前の)重農主義者フランソワ・ケネーがあげられる。