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2019-09-27 14:47
(連載2)西サハラとマグロの意外な論点
緒方 林太郎
元衆議院議員
河野外相は「日本は西サハラを国家承認していないので招待しない。」というのが理屈のようでしたが、実はこれはあまり理屈が通っていないのです。国家承認していない「国」を、日本主催の国際会議に招待した事は過去にあるのですね(例:太平洋島サミットに未承認国家のニウエを招待)。ただ、未承認国家の扱いは線引きが極めて難しいです(「台湾」問題がありますから)。
ここまで読んで、「なんだ、アフリカの果ての独立問題か?」と思ったでしょう。しかし、事はそう簡単ではありません。本件の扱いは本当に気を付けた方がいいと思います。我々の食卓に繋がる漁業の問題があるのです。日モロッコ漁業協定によって、入漁料を払いながら、日本のまぐろはえ縄漁船がモロッコの排他的経済水域でマグロ漁を行っています。リンクのプレス・リリースを読む限り、(2000ドル+49500ディルハム(約57万円))×15隻で、年間1000万円前後の入漁料を払っていると思われます。
しかし、EUにおいてはモロッコとの漁業協定はかねてから大問題になっています。主権問題を絡めて、西サハラの排他的経済水域で獲れる魚介類はモロッコ産ではないという論争があるのです。西サハラ側から言わせれば「入漁料を払え、西サハラの了解なく勝手に魚介類を取って行くな」という事です。EUモロッコ漁業協定について、西サハラ問題への手当てが不十分である事から、欧州議会では協定の破棄を含めた議論が長らくあります。そして、平成30年、欧州司法裁判所は西サハラ沖で獲れた魚をモロッコ産とする事に疑義を呈する衝撃的な判決を出しました。本件は欧州委員会、欧州議会では決してマイナーな話ではありません。
日モロッコ漁業協定に基づき、日本の漁船がどの辺りの漁場でマグロ漁をしているのか知りませんが、私の経験則からして良い漁場があるのはモロッコ本体側よりも西サハラ側の排他的経済水域でしょう。西サハラ側でマグロ漁をやっているんじゃないかなと思います。西サハラ問題でハンドリングを間違えると、西サハラ「政府」関係者から「日本は、自分達の『国』の沖で許可なく漁業をしている。入漁料払え」と日本国内で裁判を起こされかねません。実際に欧州ではそれが起きているわけですから、絵空事だとは思わない方が良いです。西サハラ問題とマグロ、意外な論点だと思う方は多いと思いますが、我々の食卓に直結する話なのです。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)西サハラとマグロの意外な論点
緒方 林太郎 2019-09-26 18:00
(連載2)西サハラとマグロの意外な論点
緒方 林太郎 2019-09-27 14:47
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