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2007-05-31 11:58
連載投稿(1) 中国のアフリカ石油外交とG8のアフリカ開発支援策
須藤繁
シンクタンク研究員
中国のアフリカ資源外交に対する先進国の懸念が強まっている。中国は、1994年以後純石油輸入ポジションにあるが、2006年の原油輸入量は日量292万バレルに増加、2010年には同500万バレルを上回ると予想されている。こうした事情を背景に、中国にとっては周知のとおり石油資源確保が最重要課題の一つとなっており、石油の探査・開発及び石油輸入の両面で、積極的な政策を打ち出している。中国の国有石油企業は、石油の探査・開発の権益を求めて、アフリカ諸国(スーダン、ナイジェリア、アンゴラ、ニジェール、ガボン、チャド、モーリタニア等)への進出に意欲を示しているが、その背景には持続的な経済成長のためには、国策としてエネルギー資源の確保に向かわざるを得ないという事情がある。
一国が経済成長を目指し、そのためのエネルギー資源を確保するために資源獲得競争に邁進せざるを得ないという事情は理解できないものではない。また資源獲得競争が、公正競争で経済合理性に基づくものである限りにおいては、それほど問題視する必要もないように思う。問題は、人権が抑圧され、あるいは開発独裁下にある国に、資源開発協力の名の下に、結果的にそれら(人権抑圧、開発独裁)に加担することを、国際社会として容認できるかという点である。そうした点から、米国は中国の姿勢をかねてから問題視している。
中国のアフリカ石油外交には様々な側面がある。アフリカ主要国における中国石油会社事業の展開事例をみていくと、いくつかのパターンがある。まず、スーダンは、人権問題から西側企業が同国との取引を禁止し、投資を控えるなかで、中国が積極的に進出するという事例である。また経済開発の失敗から重債務国に陥った国へパリクラブの慣例を無視して新たな融資を行なうというのがアンゴラの事例である。アンゴラは、累積重債務国であるにもかかわらず、中国から20億ドルもの融資を獲得することに成功した。通常、重債務国は非パリクラブ・メンバーから融資を受ける場合、パリクラブと同等の条件で取り引きを行うことを義務付けられている。従って、IMFや米国は、中国の対アンゴラ融資はパリクラブのルールに反し、国際金融秩序を乱す動きとして批判している。
アフリカ最大の産油国であるナイジェリアでは、中国海洋石油(CNOOC)が27億ドルの高額支払いで、同国の有望鉱区の45%の採掘権を獲得したとされる。この鉱区はダニュマ前国防相が民政移管前の軍事政権時に所有していた場所で、このうち10億ドルが元国防相に献上されたといわれる等、汚職への関与が取り沙汰されている。2006年8月チャドでは、操業会社の内、シェブロンテキサコ(米国)とペトロナス(マレーシア)が脱税を理由に国外退去を命じられたが、本件に関して消息筋は、チャド政府が中国の石油企業を招致するために、これらの2社に国外追放を命じたのではないかと分析している。両国が同発表前に北京で「中国・チャドの国交回復に関する共同声明」を発表し、国交樹立を宣言していたことがその根拠になっているが、中国企業のこうしたやり方が西側諸国の中国石油外交に対する批判の背景になっている。(つづく)
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