逆に、現代では使われていない用語法もある。スミスの「productive power of labour」は、スミスを英語で読めば、「total factor productivity 全要素生産性」と呼ぶようになっていることがすぐにわかる。スミスを英語で論じるときには、もちろん現代英語を修得し、同時に17世紀頃の古めかしい英語表現にも注意を払わなくてはならない。アダム・スミスは日本の経済学の基礎ではなく、言語文化の相違が壁として聳え立っているので、スミスを英語で論じる時には、スミスを英語で読んで用語法や言い回しをぜひ確認してほしい。アダム・スミス研究所のウェブサイトには、『国富論』等の縮約版や初学生向け解説、アダム・スミス講演の動画が掲載され、現代イギリス人によるスミスの英語での語り方もわかる。スミスを英語で論じるためには、まずスミスやスミス研究を英語でたくさん読んでほしいと思う。