また、別の方法として「軍事施設に供給するため・・・の原料」という規定で、今回規制を掛ける品目を読み込もうとする事も可能に見えますが、この目的部分は「for the purpose of supplying a military establishment」です。表現としてはかなり限定的です。GATTの規定自体は「軍事施設に供給する可能性もあるような・・・原料」とはなっていないという事です。そして、当然、「軍事施設に供給」しているか否かの挙証責任はすべて日本に来ます。結構、苦しいのではないかなという気がします。
そして、「安全保障上の重大な利益(essential security interests)」とは何かと言ったら、パネルは「"quintessential functions of the state"に関わる利益」と理解されるべきものとしています。この"quintessential"という言葉、訳しにくいのです。辞書には「典型的な」となっていますが、それでは全然語感を伝えていません。多分「精髄」みたいな言葉が一番いいのだと思います。変な日本語ですが、「国家の精髄的機能に関わる利益」とでも言うのがいいのでしょう。そして、ロシアの措置はこの「安全保障上の重大な利益」を保護するために必要だと判断されたので、パネルでは勝訴しています。