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2019-02-28 11:46

(連載1)ファウエイ排除をめぐる不一致

倉西 雅子 政治学者
 中国のファウエイ社が、企業ぐるみで他国の先端技術の盗用やスパイ行為を働いていたことが、全世界に知れ渡ることとなりました。中国政府もファウエイ側も容疑を否認しておりますが、ファウエイに対する警戒感は高まるばかりです。こうした中、次世代通信網である5G(第五世代移動通信システム)の整備に当たり、アメリカを筆頭にファウエイ製品を政府調達から排除する国が相次いでいます。

 親中派のドイツでさえ、終にファウエイを排除する方向に転じたのですが、EU加盟国の間では対応が分かれているそうです。イギリスは離脱するとしても、EUのさらなる深化を目指してタッグを組むフランスとドイツの両国やポーランドが排除に傾く一方で、イタリア、ポルトガル、ハンガリーといったヨーロッパ南部の諸国はこの問題には消極的なようです。共にEU加盟国であるとはいえ、自国内における情報・通信インフラの整備に関する政府調達の権限は加盟国にありますので、国によって設備の調達先に違いが生じるのです。

 それでは、仮に、5Gの敷設に際して加盟国政府の方針によってファウエイ排除国と使用国が混在した場合、どのような事態が起きるのでしょうか。EUは、欧州統合プロジェクトにおいて‘欧州市場’と称される単一市場を形成してきました。そのプロセスにあって、様々な規格や基準が統一され、可能な限り国内市場のごとき‘国境なき広域市場’の実現に努めてきたのです。

 この文脈にあって、EUはユンケル欧州委員会委員長も旗振り役となって‘単一デジタル市場’の構築にも積極的に取り組んできたのですが、今般、ファウエイ問題をめぐる加盟国間の不一致に至り、この構想にも黄信号が点っているように思えます。(つづく)
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