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2019-01-11 14:03
(連載2)民主主義を危機にさらす選挙対策
中村 仁
元全国紙記者
政権による大衆向けのイメージ操作は、多くの国に共通しています。トランプ米大統領が北朝鮮の核開発問題をやり玉にあげているのは、核廃棄を実現させることができなくても、北への強硬姿勢が選挙対策に使えると踏んでいるからでしょう。実際に北の態度はのらりくらりで、核廃棄を口実に米軍の実力行使を回避させる作戦だったという説のほうが説得力があります。つまり、北も勝ちを拾ったのです。
2017年秋の総選挙では、「急速に進む少子高齢化、北朝鮮情勢などを踏まえ」という名目で、「国難突破解散」が行われました。しきりと米軍による空爆説も流されました。「少子高齢化」がなぜ国難なのか。国難というのなら、「少子高齢化による財政危機」こそ国難で、本来なら財政再建策の選択肢を示し、国民に迫るべきです。政治は選挙に不利なことには沈黙するのです。野党も財政健全化に熱心ではありません。今春の地方統一選、夏の参院選を念頭において、消費税上げ対策として2兆円の予算を組んでも、野党は反対しません。国民民主党の代表代行は日銀出身者なのに、デフレ対策のシンボルの意味でしかなくなった物価上昇率目標2%の削除を求めようとはしていません。
待鳥聡史・京大教授は『代議制民主主義』という著書で「有権者が選挙を通じて政治家を選び、政治家が政策決定する。これが代議制民主主義の仕組みだ」と、説明しています。当然、選挙が民主主義を支えている。ネット社会化が進む中で、選挙対策を大衆向けのイメージ操作に使いやすくなり、選挙結果を左右する傾向は増しています。
先に紹介した『米中衝突』の中で、手嶋氏は「北のミサイル発射が騒がれていた頃、地方のテレビ局で、JアラートのCMが盛んに流されていた。日本海側から北海道にかけての地方テレビ局は、経営がひどく疲弊している。そういう時に、ありがたいことに政府が広告を出してくれる」と、指摘しています。Jアラートそのものは必要だとしても、イメージ操作に使われることはまずい。Jアラートに異常性はなかったか。テレビメディアがこの問題を本気で検証しようとしなかった理由が分かります。(おわり)
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(連載1)民主主義を危機にさらす選挙対策
中村 仁 2019-01-10 16:07
(連載2)民主主義を危機にさらす選挙対策
中村 仁 2019-01-11 14:03
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