朝河はヨーロッパの中世・封建制を研究した上で、日本にも封建制(feudalism)が存在したことを、鹿児島県に残っていた入来院文書を吟味して英語で明らかにした(Document of Iriki-英語版はウェブ上で公開されている)。シンポジウムでの議論から、中世時代、武士の出自の入来院が当初より荘園を営んだことから、封土(fief)で結ばれた領主と武士の関係を明確に見て取ることができたがわかってきた。九州には荘園資料が多く残っていて、その中で、入来院の文書にまず着目した朝河の慧眼が称えられた。
1920-30年代、封建制は人気の研究トピックであったようで、ヨーロッパの封建制を研究していたマルク・ブロック(フランス)に注目された。そして米コロンビア大学の経済学者エドウィン・セリグマンが、欧米と日本の社会科学者・滞米外国人たちの協力を得て総編集した『社会科学辞典』(Encyclopedia of the Social Sciences, 1931-35)に “feudalism” が項目として入った。欧・米・日本・中国の封建制度についても説明が加えられ、日本のケースについて朝河が書いている。北米については、封建制はなかったとされた。