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2018-08-09 00:00
朝河貫一の封建制研究
池尾 愛子
早稲田大学教授
7月21-22日に都内で、朝河貫一没後70周年記念シンポジウムが開催された。朝河貫一(1873年~1948年8月10日)は米イェール大学の正教授で歴史学者(中世史専門)であっただけではなく、東アジア関係図書を収集・購入して同大に日本研究の基礎を築き、さらに日米関係を憂慮し国際平和にむけての主張を展開していた。朝河は福島県二本松生れのため、福島からのシンポジウム参加者も得て、幕末から維新に到る会津藩の運命、2011年の東日本大地震からの復興への思いが重なりあっていた。
朝河はヨーロッパの中世・封建制を研究した上で、日本にも封建制(feudalism)が存在したことを、鹿児島県に残っていた入来院文書を吟味して英語で明らかにした(Document of Iriki-英語版はウェブ上で公開されている)。シンポジウムでの議論から、中世時代、武士の出自の入来院が当初より荘園を営んだことから、封土(fief)で結ばれた領主と武士の関係を明確に見て取ることができたがわかってきた。九州には荘園資料が多く残っていて、その中で、入来院の文書にまず着目した朝河の慧眼が称えられた。
1920-30年代、封建制は人気の研究トピックであったようで、ヨーロッパの封建制を研究していたマルク・ブロック(フランス)に注目された。そして米コロンビア大学の経済学者エドウィン・セリグマンが、欧米と日本の社会科学者・滞米外国人たちの協力を得て総編集した『社会科学辞典』(Encyclopedia of the Social Sciences, 1931-35)に “feudalism” が項目として入った。欧・米・日本・中国の封建制度についても説明が加えられ、日本のケースについて朝河が書いている。北米については、封建制はなかったとされた。
実は7月29日-8月3日に米ボストンにおいて、第18回世界経済学史会議が開催され、いくつかあった中国に関するセッションにおいて、中国に封建制があったとするような研究発表に出会った。上の辞典では、断定はできないが、封建制は中国では見当たらないような書き方になっていたと思う。中国については現在でも一層の研究の余地があるように聞いている。その際、朝河たちによる封建制研究は今でも大いに参考になると思われる。中国でも史料に基づいた歴史研究が盛んになることを期待したい。
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