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2018-04-10 17:48
(連載1)米国の通商外交姿勢と日中韓について
真田 幸光
大学教員
私は、米国のトランプ大統領下の米国経済の動きの中で、1.宇宙・航空産業とその延長線上にある防衛産業の強化、2.モノのインターネット(IoT)時代を見据え、米国産人工知能(AI)が使用されていない「もの」は「もの」に非ずと言うスタンダード作りに向けての動き、3.実体経済を意識したグローバル物流の支配に向けた動きなどは、国家としての経済戦略としては素晴らしいと考えています。しかし、一方で、「米国の世界的な威信低下に伴う自国第一主義の拡大」には心情的にも決して賛成できません。真の大国であるならば、大局に立ち、世界の利益と米国の利益が共に適う政策展開をする、そうした、義のある政策運営をトランプ大統領には期待しているからであります。
然るに、トランプ政権は、とうとう中国本土製品に巨額関税を課すと発表しました。そして、これを受けて、大国である中国本土も、真の大国とは程遠いスタンスを示し、「売られた喧嘩は受けて立つ」と言わんばかりに、これに対する報復措置を示しています。こうした表面的な動きを見て、少しセンセーショナルな表現を許して戴ければ、「米中は貿易戦争に突入する。」と言った状況に入ったとも言えます。そして、米中と貿易面で密接な関係にある日本や韓国、特に経済的な体力の弱い、更には、軍事的にも緩衝地帯のど真ん中にある韓国は、米中の狭間で難しい選択を迫られるかもしれません。即ち、韓国に関して更に述べれば、「韓国が米国側につけば、中国本土は戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)問題で韓国に報復したときと同じように、再び韓国への報復を強める可能性がある。一方で中国本土側に寄れば、今度はトランプ政権による大規模な貿易報復が予想される。」と言ったことが想像されます。
トランプ大統領は就任直後から、中国本土の不公正貿易に不満を示し、攻撃を予告していましたが、約1年、そうした心配は顕在化しませんでした。しかし、今年に入り、トランプ大統領は、しばしば、「米国企業が中国本土で事業を展開する際、技術移転を強要されている。その結果、中国本土がこのようにして米国から奪った技術を政府次元で支援し、半導体や人工知能(AI)など先端分野で中国本土企業が米国企業を逆転するよう手助けしている。知的財産権の侵害である。」と言った主旨の発言を強め、そして、今回、具体的な行動にいよいよ出たのであります。この間、米国政府は、米国の法律である通商法301条に基づき、中国本土による知的財産権侵害について調査に乗り出し、中国本土による不当な知的財産権の侵害が米国の国家安全保障に脅威を与えている論理的証拠集めに腐心したとも言えます。今回はその証拠を持っての行動ですから、米国政府としても、簡単には手を引かないでありましょう。
今般の米国政府による中国本土製品の制裁には、靴・衣類・家電など最大で100品目への関税賦課のほか、人工知能など先端技術分野に対する中国本土の対米投資を制限する内容が盛り込まれ、米国の産業界での意見を集約した上で発効する見通しであり、トランプ政権は、米国世論の後押しもきちんと受けるでありましょう。更に、むしろ、米国政府が中国本土政府に先んじて、中国本土の不正貿易を提訴する姿勢も示しており、通商問題では、米中ががっぷり四つで組む可能性も高まってきています。こうして、米中通商摩擦が全面戦争に突入すれば、貿易の多くを米中両国に大きく依存している韓国は、上述したように、米中間で、所謂、「股裂き状態」に陥る可能性は極めて高くなります。即ち、現在、韓国にとって、中国本土と米国は貿易相手国1、2位であり、韓国の輸出全体のうち中国本土の割合は約25%、米国は約12%となっています。更に、昨年時点で韓国の国内総生産(GDP)に対する輸出入額の比率(貿易依存度)は68.8%と極めて高く、米中のどちら共、健全貿易を続けていかないと、韓国経済は大打撃を受けることは想像に難くありません。(つづく)
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