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2017-09-29 10:07
(連載2)北朝鮮問題
倉西 雅子
政治学者
この観点から見ますと、勧善懲悪をせせら笑う人々は、実のところ、“善き大人”ではなく、人としての基本能力を忘れてしまっている人々であるのかもしれません。『旧約聖書』の「創世記」でも、アダムとイブは、“善悪を知る木の実”を食したことで、神の如く正邪の区別を付ける能力を得たとされています。この人類誕生の物語は、動物とは異なる人間性の根幹に善悪を区別する能力があることを示しているのかもしれません。ところが、今日にあってこの能力を無視する人々が生じており、善悪の曖昧化と相対化は、人間性の否定に繋がりかねない危険を潜ませていると言わざるを得ないのです(勧善懲悪の減少と犯罪組織の影響力拡大がリンケージしているようにも見える…)。
今日の北朝鮮問題は、「主体思想」という自己中心思想を掲げる北朝鮮による加害性の暴力主義に端を発しています。悪の本質が加害性にあることは上述しましたが、1950年の朝鮮戦争の発端と言い、今般の核・ICBM開発と言い、何れもが、北朝鮮が利己的動機から他国、並びに、国際法秩序への攻撃を企てた結果です。こうした行為が、国際法に照らして“犯罪”、あるいは、違法行為に当たるのみならず、金正恩委員長は、自国民に対しても虐待という罪を犯しているのです。
客観的な視点から善悪を判断しますと、“悪”と明確に認定されるのは北朝鮮の側です。北朝鮮が平然と人類の善性を悪用し得るのも、首脳部の思考にも真の意味での善悪の区別が欠如しているからとしか言いようがないのです。そして、北朝鮮の“悪”に目を瞑り、同国の犯罪とアメリカの制裁を同列に論じる論評も、その自覚の有無に拘わらず、“悪の味方”に堕しかねないのではないでしょうか。
現在、アメリカは、国連の枠組と並行して、独自制裁のレベルを一段と上げ、北朝鮮に対する締め付けを強化しています。しかしながら、中国とロシアが北朝鮮擁護の姿勢を崩していない状況では、経済封鎖の効果は限られています。国連が機能しない以上、アメリカの武力行使のみが“悪”の排除を可能とするならば、それは、善、即ち、正義の力の行使として是認されるのではないかと思うのです。(おわり)
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(連載1)北朝鮮問題
倉西 雅子 2017-09-28 20:00
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(連載2)北朝鮮問題
倉西 雅子 2017-09-29 10:07
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