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2016-10-24 16:23
(連載1)思わぬドイツ銀行救世主の登場
倉西 雅子
政治学者
欧州中央銀行(ECB)のマイナス金利政策や住宅担保ローン不正販売の件でアメリカ司法省から巨額の和解金の支払いを求められたこともあり、ドイツ銀行は現在、経営危機の最中にあります。ドイツ国内では同行の破綻を想定してか、家庭用金庫の販売が伸びているとの指摘もあります。
ドイツ銀行の経営危機に対しては、メルケル首相はこれまでのところ政府による救済については消極的な姿勢なようです。「一民間金融機関の救済に国民が納めた税金が投入されたのでは国民からの反発を招く」というのが救済に尻込みする理由なのでしょう。しかしながら、家庭用金庫が実際に一般のドイツ国民によって購入されているとしますと、既に水面下においてはドイツ銀に預金口座を有する国民による預金の引き出しが起きており、一般国民の財産喪失の危機感も高まっているものと推測されます。
ドイツ銀の破綻はドイツ全体に与える影響は計り知れないのですが、少なくとも政府の態度は冷ややかなのです。一方、IMFのラガルド専務理事もドイツ銀に関連して「多くの銀行は現在の金融情勢に合わせ、ビジネスモデルを見直していく必要がある」と語り、自助努力を説くに留めています。それでは、誰もドイツ銀に救いの手を差し伸べないのでしょうか。実のところ、思わぬところから救世主が登場するかもしれないのです。
メルケル首相の否定的発言があった後だけに、殊更に強い印象を残したのがドイツ企業によるドイツ銀支援声明です。シーメンスといったドイツ企業大手が名を連ねていましたが、“ドイツ銀は内外におけるドイツ企業の活動を金融面から支える重要なパートナーであり、今後ともドイツ銀を支えてゆく準備がある”旨を述べたのです。支援の具体的な内容がドイツ銀に対する資本増強資金の提供や早期債務返済等の資本・財務面での支援であるのかは不明ですが、グローバル化の時代とされながら政府にも見捨てられそうなドイツ銀に最後に救いの手を差し伸べたのが外でもない民間のドイツ企業であるとしますと、これは極めて興味深い“政府抜き”のナショナリスティックな現象です。(つづく)
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