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2016-07-06 16:49
(連載2)金融資本主義によってイギリスは病み、EU離脱という茨の道を選択した
児玉 克哉
社会貢献推進機構理事長
世界には金融センターとして、ニューヨーク、ロンドン、香港の3つがある。ロンドンと香港の連携に加えて、EUの結びつきもあり、イギリスは金融業界では確固たるポジションをえてきた。しかし、金融資本主義は製造資本主義よりもはるかに極端な貧富の差を生み出す。製造業は多くの労働者を必要とし、賃金が労働者にも行き渡る。しかし金融業では非常に僅かな専門家がいればいいのだ。マルクスは製造業の発展を見ながら富める者と貧しき者との二極化が起きると予言した。金融資本主義ではマルクスが予言した以上の二極化が起きているのだ。
つまりイギリスは国としては財産をもちながらも、その配分の不平等さから、極めて病む国となってしまった。イギリスは歴史的に階級制度が厳しくある。労働者階級と上流階級とはかなり離れている。だから労働者階級の不満は上流階級に向かうのではなく、自分たちの仕事を奪うかに見える移民へと向けられたのだ。「EUに入っているから移民の受け入れが増え、そのことによって自分たちの仕事が減り、社会が混乱する」と映ったのである。
イギリスの金融業などで稼いだお金は、新たな産業の展開にもっと使って、イギリスに新産業を根付かせなければならなかった。そしてより多くの労働者が雇用されるようにして、富の配分ができるようにしなければならなかったのだが、イギリス上流階級の個人主義はそこまでの展望を持っていなかったといえる。社会・経済の労働者の不満が移民に向けられ、そしてEUの離脱にまで繋がってしまった。
問題は「これからどうするのか」だ。主産業の金融業においても、EUでの業務や取引にこれまでよりは負荷がかけられるだろう。ポンド安は金融業にとってはマイナスでしかない。ジブラルタルなどは独立の動きまである。そこに移った投資家たちは、イギリスのために事業をしているのではない。そもそもイギリスを捨てて住所も変えた人たちである。独立してEUに加盟する道を選択することもありえる。イギリスの金融業は大きなダメージを受ける。パナマ文書問題がなぜ出たのか、まだわからない。しかし、これは中国とイギリスの金融資本主義にダメージを与えるためだという説がある。私もそう思っている。ダブルでダメージが来る。イギリスでEU向けに作られた外資による工場も条件によっては数年で大陸に移ることになりそうだ。これは労働者の職を失うことになる。大変だ。しばらくの間、イギリスには不況の波がやってきそうだ。王室領にためられた資金を国の未来のために使って新たな産業を作ることが出来るかどうか。イギリスの大学生は本当に仕事がなくて困っている。未来を設計するリーダーがいるかどうか。これは日本にも言えることだ。(おわり)
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(連載1)金融資本主義によってイギリスは病み、EU離脱という茨の道を選択した
児玉 克哉 2016-07-05 15:57
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(連載2)金融資本主義によってイギリスは病み、EU離脱という茨の道を選択した
児玉 克哉 2016-07-06 16:49
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