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2016-01-20 12:40

(連載1)シリアがサウジとイランの代理戦争の場になる可能性

児玉 克哉  社会貢献推進機構理事長
 サウジアラビアとイランの対立が激化しつつあります。イスラム教スンニ派の盟主サウジアラビアが、シーア派の大国イランとの国交を断絶しました。事の起こりは、サウジアラビア政府がシーア派指導者のニムル・ニムル師を処刑したことでした。反政府の活動の罪でしたが、宗教的な指導者の処刑は象徴的な意味を持ちます。シーア派の大国であるイランではこれに激怒した民衆がイランのサウジアラビア大使館を襲撃しました。お互いに収拾がつかなくなり、断交に至ったのです。

 しかしサウジアラビアとイランは国境は接していません。対立は激化しますが、すぐに紛争が始まるとは思えない状態です。両国ともに軍事大国。危険ではありますが、両国間で火の手が上がるにはまだ時間があります。

 私は問題はシリアだと思っています。シリアはISIS(イスラム国)の活動の場でもあります。ISISはテロ活動を積極的に行う過激組織として知られます。ISISへの攻撃では多くの国がまとまるのですが、シリアにはアサド政権とその反体制派があり、三つ巴の戦いになっています。大雑把に言えば、イランはアサド政権を支援し、サウジアラビアはアサド政権への反体制派を支援しています。さらにロシアがアサド政権を支援し、アメリカが反体制派を支援しているという構図です。ISISへの攻撃は行われているのですが、それを口実にアサド政権への打撃や反体制派への打撃を試みることも行われており、暴力の文化が広がっています。シリアは中東の火薬庫になりつつあるのです。

 サウジアラビアは原油価格の暴落に苛立っています。イランが原子力へのオプションを模索していることにも反発しています。といって直接には両軍事大国が戦争をするわけにもいかない、となると代理戦争の選択肢になります。こうした代理戦争はすでにイエメンで行われました。2015年1月にイエメンで内戦が勃発。サウジアラビアはイエメン政府を支援し、イランはシーア派の武装組織「フーシ派」を支援しています。(つづく)
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