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2015-07-15 10:40
(連載2)安保法制:パーセプション・ゲームの功罪
三浦 瑠麗
国際政治学者
では、維新が対案提出を通じて具体的に提起しようとする論点は何なのでしょう。維新の対案では、「存立危機事態」に基づく集団的自衛権を認めず、日本周辺での日本防衛にあたる外国軍への攻撃は、日本への攻撃とみなして自衛権を行使するというたて付けとなっています。維新案は、一見すると外国軍への攻撃を日本への攻撃とみなすわけですから、非常にオーソドックスな集団的自衛権の行使というようにも見えます。ただし、その行使は、「我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険があると認められるに至った事態」に限定されており、あくまで個別的自衛権の延長と位置づけているようです。国際的には、同盟国が共同で行う防衛行動が、集団的自衛権の行使に該当するのか、個別的自衛権の行使に該当するのかについては、誰も気にしませんから特に問題とはならないでしょう。もちろん、国内の憲法解釈上は、個別的自衛権の拡大解釈なのか、集団的自衛権の行使容認なのかについて整理は必要ですが。
個人的には、「我が国に対する(中略)武力攻撃が発生する明白な危険」がある場合と、「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明確な危険」がある場合との間に、大きな差分があるとは思えません。この辺りは、多分に言葉遊びの世界であり、象徴性をめぐる争いなのだろうと思います。結局は、政府が具体的な状況に即して解釈することになるのでしょうから。
他方で、維新案には明確な抑制性もあります。一つは、対象地域を「我が国周辺」に限定していること。いま一つは、自衛権を行使する対象を「我が国の防衛のために活動している外国の軍隊」に限定していることです。これによって、いわゆる「地球の裏側」論を排除し、政府答弁の中で繰り返し言及されてきたホルムズ海峡のような事案を排除できるということでしょう。この点については、政府答弁が稚拙な印象を与えたところもあり、国民の間で支持する向きも強いのではないでしょうか。
気になるのは、維新の案の基層に、個別的自衛権を拡大解釈する方が、集団的自衛権を行使するよりも抑制的であるという発想があることです。これは、国会審議の中でも見られた傾向でした。有事に際して、個別的自衛権を拡大解釈する発想が本当に抑制的な政策につながるのか、この辺りには安保論議をめぐるパーセプション・ゲームの罪の部分が現れていると思います。(つづく)
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(連載1)安保法制:パーセプション・ゲームの功罪
三浦 瑠麗 2015-07-14 17:23
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三浦 瑠麗 2015-07-15 10:40
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