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2015-01-01 11:13
(連載2)ハードパワー外交もソフトパワー外交も稚拙なオバマ政権
河村 洋
外交評論家
アラブ側からも批判の声は挙がっている。アラブ系イギリス人のジャーナリスト、シャリフ・ナシャシビ氏はアメリカがグラスルーツでの自由への希求を犠牲にしてアラブの専制体制と復縁したことに深い失望の意を表明している。オバマ大統領はブッシュ政権が始めた中東での軍事的プレゼンスを削減した。それならばアメリカはそれに代わるプレゼンスを拡大して当地での過激思想の拡大に歯止めをかけねばならない。遺憾にもオバマ氏はハードパワーのプレゼンスとソフトパワーのプレゼンスの両方とも削減してしまった。これは将来へのビジョンも示すことなく、ただブッシュ政権期の外交政策を否定しただけなのだろうか?
オバマ政権のソフトパワー外交に評価を下すうえで最も重要な事件の一つは、去る12月13日にカーネギー国際平和財団中東プログラムのミシェル・ダン上級研究員の入国をエジプトが拒否した一件である。ダン氏はアメリカの政策形成者の間でもエジプトの民主化に関しては第一人者である。ダン氏はエジプト外交問題評議会が主宰する国際会議に出席しようとカイロに向かったが、その団体はエジプト外務省の後援を受けている。そしてダン氏が飛行経由地のフランクフルトでエジプト政府からの電話インタビューを受けたところ、入国を拒否されてしまった。
エジプト側はこの件に関して理由を述べていない。ブッシュ政権期のエリオット・エイブラハムズ元国家安全保障会議中東部長は、この事件はシシ政権がムバラク政権と同様に専制政治による腐敗とジハード主義者の蜂起というスパイラルに陥っていることを示していると論評している。よってエイブラハムズ氏はこの国がもはやアメリカの戦略的パートナーには値しないと主張する。非常に不思議なことにオバマ政権はこの事件に関してエジプトに対して有意義な圧力を加えていない。
問題はもはや予算ではない。オバマ大統領にはアメリカのソフトパワーを本気で広める気があるのかきわめて疑わしい。オバマ政権によるハードパワー外交からソフトパワー外交への転進は空虚である。それに対応するかのように、アジア転進政策もアジアでのアメリカのプレゼンスを強化してはいない。オバマ氏は香港の民主化運動の支持には熱心ではなかった。北京でのAPEC首脳会議でオバマ大統領は中国の習近平国家主席とご機嫌で握手をしたが、中国は首脳会議の機をとらえてアジア太平洋諸国の首脳たちにJ31ステルス戦闘機を誇示するといった軍事的な示威行動に出たのである。世界の警察官でもない、民主主義のチャンピオンでもないともなると、オバマ大統領はアメリカをどのような国にしようとしているのだろうか?(おわり)
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(連載1)ハードパワー外交もソフトパワー外交も稚拙なオバマ政権
河村 洋 2014-12-31 12:26
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(連載2)ハードパワー外交もソフトパワー外交も稚拙なオバマ政権
河村 洋 2015-01-01 11:13
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