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2014-11-23 12:56
(連載1)安倍首相と黒田総裁にすき間風
中村 仁
元全国紙記者
自信満々だった黒田日銀総裁の表情に、不安と焦りの色を感じる人が増えてきているような気がしてなりません。解散・総選挙の期間中は、2人のすれ違いの話は封印されるでしょう。問題は選挙後です。2人の蜜月関係に変化が広がっていくような予感がしてなりません。
ちょっとした異変が起きたのは、11月19日の金融政策決定会合後の記者会見でした。黒田総裁が願っていたであろう消費増税が、安倍首相によって先送りになることが確定的になったことを受け、「財政再建を政府に期待している」と語ったのです。異次元緩和は財政再建とセットとなっており、一般論としては、珍しい指摘ではありません。総裁が同じ発言を4回も繰り返したとなると、安倍首相に対する間接的な批判をしたと理解されますね。
その後、安倍首相は消費増税の先送りと解散・総選挙をセットにした選挙戦術で、「もう4年の長期政権の確立」に臨む考えを明らかにしました。マイナス成長の現状を考えると、消費増税の先送りは止むをえないとしても、「国民に痛みを覚悟してもらう財政再建計画をきちんと練り直してくれるのだろうか」と考える人は、黒田総裁に限らない思います。
黒田総裁の心境を推測すると、「安倍首相が唱える財政再建は口先だけで、日銀は異次元緩和の長期間の継続、あるいは追加を求められるのではないか」ということでしょうか。増税、歳出削減を伴う財政再建は国民に痛みを求める不人気な政策です。それに対して、金融政策の当事者は日銀だけですから、国会の議決もいらず、日銀が「うん」といえば、異次元緩和であろうと、その手段が国債の大量購入であろうと、実現できます。問題は、ただでできる景気政策はなく、そのツケは後から必ずやってくることです。(つづく)
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