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2014-07-21 15:42
(連載1)マレーシア機はなぜ危険空域を飛んだのか
中村 仁
元全国紙記者
ウクライナ東部でマレーシア機が撃墜された事件(死者298人)では、これまでの報道によると、最大の悪党は親ロシア派武装集団であり、つぎにミサイルを供与したと見られるロシアも同等かそれ以上の悪党であるとされています。しかし、もっと問題があるのではないでしょうか。おびただしい数の報道、論評を読んでいて気がついたのは、戦闘状態というより戦争地域の上空をマレーシア機はなぜ飛んだのかという疑問です。解明がまったく足りません。
航空管制当局が高度1万㍍までの飛行を認めていた、親ロシア派は1万㍍以上までとどくミサイルを保有していないとの情報だった、とかいわれています。結果はご覧の通り、1万㍍以上の高度で飛んでいたマレーシア機が撃墜されたのです。ロシアがひそかに3万㍍までとどくミサイル「ブグ」を親ロシア派に供与していたらしいとの説が有力です。さらに、動きがゆっくりした旅客機は戦闘機に比べ、撃墜しやすいとのことです。まさか、始めから旅客機を狙うほどかれらも残虐ないと信じれば、誤射説もありえますね。
マレーシア機は3月、南シナ海で突然、消息を絶ち、239人の行方が今なお不明です。そんな大事故があったばかりですから、なおさら安全管理に周到な注意を払っていなければならないところです。マレーシアの運輸相は「この飛行ルートは欧州の航空会社のほか、アジア太平洋の14か国が利用していた」といっています。だから自分たちのせいではないと、いいたいのでしょうか。ウクライナ上空を通るルートだと、飛行距離を短縮でき、燃料費を節約できるという判断が働いたとされます。恐らくそうでしょう。結果は、そのために撃墜され、はるかに高い代価を払うことになったのです。ロシアや親ロシア派に代償を払えといったこところで、責任を明確にするのが難しい戦争状態ですし、ロシアのプーチン大統領は「戦闘が再開されなければ、悲劇は起こらなかった」と、居直っていますね。「ロシアの責任は重い」(7月19日の日経社説)といっても、もどかしい限りです。
日本の日航、全日空は、日本と欧州を結ぶルートでは、ウクライナ上空を飛ぶ便はなく、ロシア・シベリア北部、北欧上空を飛行しているそうです。地理的にそうできるのかもしれません。それと東アジアで中国が防空識別圏を設け、東アジアでの緊張の高まりから、日本の航空会社がリスク管理に敏感になっているせいでもあるのでしょう。管制当局とは別に、航空会社が自主的に判断して、危険な紛争地域を避けることもあるようですね。(つづく)
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