ここで、言語文化が絡む話題として、英語版『神道事典』の作成過程にまつわるエピソードも紹介しておきたい。まず可能な限り世俗的な日本語で書かれた『神道事典』(国学院大学日本文化研究所編)が1994年に出版され、日本語を読める研究者にとってはとにかく読み進められるものが利用可能になった。そのうえで、内外の研究者の協力により英訳が進められ、2007年頃に力作の英語版が完成した。世俗的日本語版について、「これだけ世俗的な日本語で書けば、神道の影響が日本語の隅々まで及んでいることがわかるでしょう」と関係者の一人が語っていた。さらに、「日本語での西欧の社会科学研究において、日本語での解釈に頼っている場合、日本語の影響を大きく受けていることが(海外の日本研究者から)指摘されていますが、私たちに言わせればそれは神道の影響だということになります」、とまで言われた。データや事実を踏まえた議論や、数学の洗礼を受けた経済学などでは(日本語自体が変化して)事情が違ってくるようであったが、こうした問題を議論するためには高めの語学力が必要であろう。その一方で、日本での研究・実践の成果が外国語で解釈・理解されることにより、現在共有されている理論の日本的ルーツが解明されたり、実践的分野を含む社会科学の幅が拡大したりすることを望む次第である。(Encyclopedia of Shinto, http://eos.kokugakuin.ac.jp/modules/xwords/)