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2013-08-24 11:08
モスクワ市長選、反政権派弁護士が現市長に迫る
飯島 一孝
ジャーナリスト
モスクワ市長選は9月8日の投票日まであと約3週間。プーチン政権の支持を受けたソビャーニン市長(55)を反プーチン運動の指導者ナバリヌイ弁護士(37)が追う展開で、このところナバリヌイ氏がユニークな選挙運動で支持を広げている。ナバリヌイ陣営は決選投票に持ち込む作戦で、今後の進展によっては波乱が起きる可能性もある。ナバリヌイ候補の選挙運動は、人々が多く集まる駅などの街頭に立ち、有権者と直接対話する手法だ。日本で「辻説法」と呼ばれるやり方に似ていて、英字紙モスコー・タイムズによると、この対話集会は次のように展開する。ナバリヌイ候補が「私について何を知っていますか」と聞くと、誰かが「汚職」と答える。そこで候補は「汚職って何ですか。私が森林を丸ごと盗んだと言う件ですか」と議論を畳み掛けていく。
同候補が森林売却に絡む横領罪で起訴され、今年7月、禁錮5年の実刑判決を受けたことを逆手にとり、無実を主張するやり方だ。候補の率直な対応に拍手する人も少なくない。こうして人々を対話に引っ張り込み、自説を展開する。1日3カ所でこうした対話集会を開いていて、投票日までに100回以上開く予定だ。選挙参謀のボルコフ氏は「資金カンパ、ボランティアの多さなど、選挙運動は新しいことばかりですが、とくに対話集会は革新的です。選挙運動の主目的は、誰に投票するか決めかねている有権者に決めさせることですから」と語る。
ナバリヌイ候補は対話の中で、17年間モスクワに住んでいることや家族のことを話し、年金や移民問題など有権者が知りたい身近な問題を積極的に取り上げている。このため有権者の関心も高く、確実に支持者を増やしていると陣営ではみている。最新の世論調査では、ソビャーニン市長が過半数の得票率で当選するというものが多いが、ナバリヌイ候補の得票率も確実に増えており、20%を超えるとの見方も出ている。ナバリヌイ陣営では、市長が1回目の投票で過半数を取るのを抑え、決選投票に持ち込めば勝機があるとみている。
政権側は、ナバリヌイ候補が実刑判決時に市長選への立候補を表明していたことから、条件付きで釈放する異例の措置をとった。このため落選後は再び収監するものとみられるが、得票率が高いと収監しにくくなるのは明らかだ。これまで政権側は「危険人物は収監する」との方針でやってきたが、今回はどうするのか。得票率によっては難しい対応を迫られそうだ。
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