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2013-07-09 17:34

(連載)「ねじれ解消」は、むしろアベノミクスの障害になる(1)

鈴木  亘  学習院大学教授
 7月21日の参院選挙を前に、テレビでは連日、各党代表が集まっての論戦が繰り広げられているが、いやはや、どうにも盛り上がりに欠ける状況である。概ね好調に進むアベノミクスと、アベノミクスの今後に対する依然大きな期待を前に、国民の心に響く論争テーマが存在しないのである。野党の主張は、「スベって」ばかりである。

 民主党時代と比較して、目を見張るばかりのアベノミクスの実績に接している国民には、野党による「対案無き」アベノミクス批判など全くの無駄でしかない(アベノミクスの副作用ばかりを強調する民主党の海江田代表は、ドン・キホーテかピエロのようにしか映らない)。どうやら、会期末の問責可決と重要法案廃案という野党の大失態によって、今回の選挙における最大の争点は、「ねじれ解消」になりつつあるが、本当にそれで良いのだろうか。

 だいたい、ねじれ解消とは、論争すべき「政策テーマ」でもなんでもなく、単なる選挙結果である。安倍首相の言い分としては、アベノミクスをはじめとする改革を進めるために、「ねじれ解消」が必要ということであるが、果たしてそうだろうか。自民党が大勝してねじれが解消された場合に、それで本当に、国民が望む方向にアベノミクスや諸改革が進むかどうかには、かなりの疑問がある。なぜならば、現在、安倍首相や菅官房長官ら側近の占める官邸が、まがりなりにも自民党内で求心力を持って、改革が進められているのは、安倍首相の「改革色」を前面に出していた方が、選挙の顔として有利であるからである。しかし、今回、自民党が参院選で大勝すると、その後は3年間も選挙が無い与党独断の無競争状態に入る。今回選ばれる参議員達の任期も6年という途方もない長さである。

 この状態では、もはや自民党に「改革の顔」は必要なく、本来、政治力を持っている自民党の旧態依然とした族議員らと、省益を守る霞が関の各省庁、既得権益業界の「鉄のトライアングル」が完全復活して、安倍首相の改革を妨害するようになることは、容易に想像ができよう。既に現在、自民党の族議員と各省庁官僚の復権ぶりは凄まじいものがある。恐らくは選挙後に「安倍おろし」が始まるか、安倍首相を換えないまでも(麻生財務相という話もあるようだが、安倍首相に代わる顔は、容易には見つからないだろう)、菅官房長官らの側近を追い落として、安倍首相の権力を、実質的に無力化するような動きにでる可能性が高いと思われる。これは、国民がこれまで何度も見てきた自民党の「いつもの風景」である。(つづく)

 
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