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2013-01-26 10:52
(連載)フランス軍の介入でマリ情勢は好転するか(3)
六辻 彰二
横浜市立大学講師
こうして実現した軍事介入ですが、これがマリ動乱を治める契機になり得るのでしょうか。少なくとも、短期的には、北部を実効支配しているMNLAやアンサル・ディーンを掃討し、諸都市を解放することはできるかもしれません。フランス軍の誇るミラージュ戦闘機が投入されていることからも、正面からの軍事衝突で、MNLAやアンサル・ディーンの勝機は薄いと思います。
ただし、長期的にこれらの武装勢力を抑えこめるかといえば、決して楽観はできません。1960年代から分離独立運動を続けてきたトゥアレグ人たちにとって、数ヶ月の戦闘で負けたり、撤退することなどは、大きな問題ではありません。アンサル・ディーンに代表されるイスラーム過激派にしても、若年層の失業や貧困といった社会問題が深刻な状況が、既存の秩序を力ずくで転換する志向を生んでいる以上、新人のリクルートには事欠きません。まして、イスラーム世界全体から資金を調達し、世界中でそれを運用して収益をあげている「本家」アル・カイダから支援を受けたAQIMが背後にいるとなれば、物質的にもそう簡単に行き詰ることはありません。
軍事力で一方的に市民を支配することは、認められるべきでないでしょう。しかし、政治的、経済的、社会的な不満の発露がこの動乱の背景としてあることからすれば、アフガニスタンやイラクなどでみられたように、軍事的な手段のみで武装勢力を抑えることはできません。政治的な意思表示の機会を与えること、経済的な機会を増やすこと、少数派エスニシティ(民族/部族)の権利回復など、国家のあり方そのものを転換しなければ、テロを根絶することはできません。
それがなければ、短期的に北部都市を解放したとしても、フランス軍や周辺国部隊が半永久的にマリにいられない以上、アフガニスタンでタリバンが勢力を回復しているように、MNLAやアンサル・ディーンがその活動を沈静化させることは想像しにくいのです。現下の情勢から考えると、国際的に放置されるというシリアの二の舞を避けられたマリですが、アフガニスタンやイラクの二の舞に陥る可能性は、極めて高いといえるでしょう。(おわり)
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(連載)フランス軍の介入でマリ情勢は好転するか(2)
六辻 彰二 2013-01-25 10:23
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六辻 彰二 2013-01-26 10:52
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