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2012-12-24 09:40
(連載)「与党の党首を野党が支持する」危険性(2)
六辻 彰二
横浜市立大学講師
自由主義と民主主義のバランスという観点からすると、(それをすることは自由とはいえ)首班指名において与党の党首を推すことは、そもそも野党の存在意義を否定するものです。議会政治において、多数派である与党が意思決定能力をもつことは、「多数者の主権」に適います。例え野党支持者でも、与党中心の議会で決定されたことに従わなければならないのは、この観点から当然です。
一方で野党は、議会における意思決定能力はほとんどありませんが、一方で社会にある多様な意見、少数派の意見を議会に持ち込む、利益表出の機能を担っています。「議会政治の半分は野党が担う」と言われる所以です。野党が与党と対決することは、「多数者の主権」が「多数者の専制」に陥り、少数者が一方的に抑圧されないようにするために欠かせないのです。いわば民主主義の暴走を抑える、自由主義の防波堤としての役割が、議会政治における野党に課された最大の任務なのです。もちろん、「ためにする」反対や批判は非生産的であり、まして景気、原発、TPP、安全保障など、重要事項が山積するなか、意思決定において野党が与党に協力することは必要です。しかし、野党が与党の党首を支持するとなれば、話は別です。それは議会政治を放棄し、全体主義に向かう一歩に他なりません。
幸いにもと言うべきか、先述のように、石原代表との協議によって橋下氏は主張を引っ込めたようです。政党政治家である石原氏からすれば、首班指名で他党の党首を支持すれば、それは相手との差異が不透明化し、吸収されかねないという警戒感が働いたとしても、不思議ではありません。それはかつて、構造改革を掲げ、自民党の主流派と対立する小泉元総理が就任したとき、民主党の鳩山代表(当時)が国会の質疑で「是非頑張ってほしい」とエールを送ったことが、民主党の存在感を全くなくしてしまったことを思い起こさせるものです。政党政治における戦術という意味においても、橋下氏の判断はまずかったと言えるでしょう。
今後の展開は注視し続けるしかありません。しかし、いかに政治的決断が遅いとはいえ、だから多数派の意思に全てを従わせるべきという思考は、危険であるだけでなく、社会の異なる利害を調整するという政治家の役割を放棄する、一種の怠慢ですらあります。そして、極めて単純化された主張に乗る支持者が増加することが、これを助長させることになることには警戒すべきと言わざるを得ないのです。(おわり)
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(連載)「与党の党首を野党が支持する」危険性(1)
六辻 彰二 2012-12-23 21:37
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(連載)「与党の党首を野党が支持する」危険性(2)
六辻 彰二 2012-12-24 09:40
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