ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2012-07-04 00:03
(連載)国家の安全保障政策に関して(2)
石崎 俊雄
龍谷大学教授
まず、この前提に立ったうえで、私の安全保障に対する考え方を申し上げると、軍事力だけに頼らない総合的な安全保障をもっと積極的に進めていくことが重要だ、という視点に基づく考え方である。国家の安全は軍事力だけで守れるものではない。経済活動や文化活動にももっと視野を広げるべきである。経済活動においては、他国民の生活に必要な物資を適正な価格で供給することは、日本の安全保障につながる。人間は、満足のできる生活をしていたり、幸福感を感じているときに、他国の安全を脅かすようなことはしないものである。これは、動物の本能と言ってもよい。文化、芸術活動もまたしかりである。
文化がどうして安全保障につながるのか、と反対意見を述べられる方がおられるかもしれないが、ならば、太平洋戦争の時、なぜ京都の洛中は空襲を受けなかったのか考えて見られればよい。もちろん、ヨーロッパでは歴史のある都市が戦争で破壊されている例は多々あるが、少なくとも京都は武力で守られたのではなく、その歴史と文化によって守られたという事実は違いない。
そう考えると、2020年に東京にオリンピックを招致するのも、日本の安全保障の一環として考えてもいいのではないかと思う。確かに、50年前の東京オリンピックもその後の大阪万国博覧会も、戦後の日本の安全保障、すなわち平和に大きく寄与したのではないかと考える。
1機100億円以上する戦闘機を買うことも、それはそれで重要であるが、もっと視野を広げた安全保障を考えていくべき時代に来ているのではないかと考える。その際、最も恐れるべきことは、無神経で他国民の反感を買うような経済活動や文化活動である。これらは、安全保障に対してむしろ深刻なマイナスの効果をもたらす。日本人は、自分自身の安全保障に対する無関心さが、知らず知らずのうちに日本の安全を脅かしつつあることに、早急に気付くべきだと思う。(おわり)
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
(連載)国家の安全保障政策に関して(1)
石崎 俊雄 2012-07-03 18:06
┗
(連載)国家の安全保障政策に関して(2)
石崎 俊雄 2012-07-04 00:03
一覧へ戻る
総論稿数:4819本
グローバル・フォーラム