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2012-06-10 00:02
(連載)無人機によるテロリスト掃討は合法的・倫理的か(1)
六辻 彰二
横浜市立大学講師
4月30日、反テロセンターのジョン・ブレナン議長がワシントンでの講演で、パキスタンなどで行われているテロリストに対する無人機による攻撃を、アメリカ政府関係者として初めて認めました。ブレナン議長は、遠隔操作の無人航空機によるテロリスト攻撃が、戦略的に「賢明」であるだけでなく、「合法的」で、なおかつ「倫理的に問題ない」と強調しました。
無人機による攻撃が、米兵の犠牲者を減らし、さらに大規模な部隊展開を不要にするという点において、ブレナン議長のいう「戦略的に賢明」であることは、少なくともアメリカの立場に立った時に、理解しやすい主張だと思います。もっとも、米兵による民間人の無差別殺傷事件などもあり、無人機による作戦は、冷戦時代から友好関係にあったパキスタン国内の反米世論に拍車をかけている側面は否定できません。その意味で、「戦略的に」というより、「戦術的に」といった方が妥当かもしれません。
では、「合法的」と「倫理的」に関しては、どうでしょうか。ブレナン議長によると、「合衆国は国際テロ組織と戦争状態」にあり、合衆国憲法と国内法に基づいて「大統領にはその遂行のための権限が与えられている」由です。また、「遠隔操作による攻撃を禁止するいかなる国際条約もない」がゆえに「国際法的にも問題はない」という主張でした。確かに、「規制する国際法がないのだから法的に問題ない」というのは、少なくとも「違法でない」のは確かで、法律論としては正当な言い分と言わざるを得ません。
また、戦争状態にあるとするならば、アメリカの国内法では最高責任者たる大統領に必要な措置をとることが認められているでしょう。しかし、その法律の効力はあくまでアメリカ国内で適用されるはずのものです。パキスタン国内での遠隔攻撃を、アメリカの国内法で正当化することは、いささか無理があると言わざるを得ません。アメリカは国家として自国と自国民を守る権利と義務があるとしても、だから了解を得ていない他国での軍事行動が認められる、ということにはならないはずです。ブレナン議長の講演では、国家を防衛するアメリカの主権については述べられていますが、パキスタンの主権については一切触れられていません。これでは、「アメリカの主権は他国の主権に優越する」と公言していると取られても仕方ありません。(つづく)
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