パラレル・ヒストリー研究は既に始まっている。英文論集『近世日本の経済思想』(Economic Thought in Early Modern Japan, Brill)が、ベティーナ・グラムリッヒ・岡とグレゴリー・スミッツの編集で、ドイツ、アメリカ、チェコ、日本の日本研究者の寄稿により、2010年に刊行されている。彼らは2008年に独チュービンゲン大学で、2009年に米コロンビア大学で、国際会議を開催して、西洋思想の影響が及ぶ以前の江戸時代及びそれ以前からの経済思想の展開について、概ね平易な英語(20世紀に定着した経済英語)で表現する論文集を刊行した。日本では19世紀になって西洋思想の解釈(翻訳)、受容が始まるが、近世やそれ以前の社会においても、貨幣、市場、信用・金融(シリーズテーマ)が存在し、政治改革(経済政策や債務救済を含む)が行われていた。中世に注目したのはイーサン・セーガルで、近世になって「貨幣経済」現象が「大量」発生し、知識人たちが注目して、荻生徂徠、草間直方、太宰春台の著作が登場したわけである。