バラク・オバマ大統領は、オサマ・ビン・ラディン襲撃の成功に鑑みてアフガニスタンからの米軍撤退を表明した。しかし、軍の首脳達は性急な撤退がもたらす致命的な結末を警告している。この戦争の究極の目的は、単にビン・ラディンを殺すことではなく、安定した民主主義の建設によってアフ・パク地域でテロリストの根拠地の建設を許さぬことである。兵員削減の是非を問う前に、アフガニスタンの戦略的な全体像を理解しなければならない。外交政策イニシアチブは、この戦争の基本構図に関し、“Fact Sheet: Success in Afghanistan is Critical to Prevailing in the War on Terror” というレポートを刊行している。このレポートは、ブルッキングス研究所のブルース・リーデル上級研究員が『デイリー・ビースト』紙に投稿した論文を引用し、「アメリカは、新たな指導者の下で体制を立て直すアル・カイダに警戒を怠らぬように」と呼びかけるとともに、戦争の成果に関しては、デービッド・ペトレイアス陸軍大将が「アメリカ、NATO、その他ISAF軍部隊がアフガニスタンとパキスタンの国境地域でアル・カイダとその関連組織に圧力を強め、この戦域内で彼らが作戦の計画および実行を行なう能力は大幅に落ち込んだ」と述べている。
外交政策イニシアチブのロバート・ケーガン所長は「バラク・オバマ氏は、1930年代の大統領達のように孤立主義者で、自らの再選にばかり気をとられている」と論評している。ケーガン氏は、「しかし、性急な撤兵によってアル・カイダばかりか、ハッカーニ・ネットワークやラシュカレ・トイバといったテロ集団がアフ・パク地域で勢いづくことになる」と述べている。9・11の再来ともなれば、それで被る損害は、増派に費やした数十億ドルでは済まなくなる。さらに「米軍撤退は、ヨーロッパの同盟諸国にも波及効果を及ぼすであろう」とも述べている。ISW(Institute for the Studies of War)は6月30日にオバマ大統領の撤退計画を批判するパネル・ディスカッションを開催した。この討論に参加したのはジョン・マケイン上院議員、ジョセフ・リーバーマン上院議員、そしてジャック・キーン退役陸軍大将で、ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロン上級研究員が司会を務めた。