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2011-06-29 10:09
民主政治のはらむ衆愚政治のリスク
湯下 博之
元駐フィリピン大使
東日本大震災の復興構想会議による「復興への提言」が同会議から菅首相に提出された。大震災から既に3ヵ月半も経っているのに、今だに復興策の方向すら打ち出されていないのは看過できないことである。英知を集めて作成された今回の「提言」を基に、早急に財源の裏付けを含めた具体的政策を策定し、その実施に国を挙げて取り組むべきである。
それにしても、最近の日本の政治には困ったものだ。東日本大震災という近代日本にとって第三の国造りを必要とする国難に直面しているのに、適切な対応がなされていないばかりか、メディアでは政策よりも政局に関心が向けられている。こんなことで良い筈はない。明治維新や第二次世界大戦からの復興を見事になし遂げた日本の政治はどこへ行ってしまったのか。近頃は、寄るとさわると、こういったぼやきが聞かれる。全く、どうしてこんなことになってしまったのだろう。
その原因としては、種々の要因が挙げられ、必ずしも単純ではないであろう。しかし、私は、その中で、基本的要因とも言うべき一つの要因を取り上げて、日本の政治の立てなおしを訴えたい。それは、民主政治の基本にある多数決の問題についてである。政治制度を比較した場合に、民主制は君主制や独裁制に比べて、多数の支持に基いているので望ましいとされるが、同時に民主制は衆愚政治となるリスクをはらむことが指摘されている。「数さえ多ければ、良い政治が行われる」という訳ではない。
ところが、最近の日本の政治は「数がすべて」であるかの如くであり、国会議員選挙でも、人物や政見ではなく、知名度が決め手になる、といった感じである。数は重要であるが、人物や識見、党の政策といった事柄が評価基準となった上での数でなくては、意味がない。では、どうすればよいか。私は、国全体が、特にメディアが、政策にもっと目を向けることが必要であると考える。ここでいう政策とは、選挙目当ての公約ではなく、財源も含めた実現可能なものであり、更に、その前提としての日本の進路を含めたものである。
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(連載)第三の国造り(1)
湯下 博之 2011-03-30 10:12
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(連載)第三の国造り(2)
湯下 博之 2011-03-31 10:28
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(連載)第三の国造り(3)
湯下 博之 2011-04-01 14:40
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民主政治のはらむ衆愚政治のリスク
湯下 博之 2011-06-29 10:09
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