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2011-04-07 11:15

(連載)シリアの「休日革命」に展望はあるのか?(1)

武嶋 護  中東情勢研究家
 2011年1月以来中東・アラブ諸国で相次ぐ政情不安の一環であるかのような形で、3月半ば以降シリアでも「民主化・改革」要求とされる抗議行動が「全国規模で続発」しているかのような報道が盛んに流布している。とりわけ、ロイター通信を情報源とする人々にとっては、今にもシリアで「革命」が成就するかのようにさえ見えたことだろう。

 しかし、現実にはシリア政府の機能や社会・経済活動を麻痺させるような事態には至らず、チュニジア、エジプト、リビアのような政変・混乱につながるような雰囲気とは言い難い。それでは、シリアの抗議行動の実態や、それに対するバッシャール・アサド政権の対処方針はどのように読むべきなのであろうか。

 アサド政権による強固な権威主義体制が敷かれているとされるシリアでも、21世紀に入ると携帯電話、インターネット、ソーシャル・ネットワーキング・サービスのような、情報・通信産業の発達からは無縁ではいられなかった。こうした技術を利用した反体制的動員の手法は、既に2001年ごろの「ダマスカスの春」と呼ばれた自由化機運の盛り上がりの際や、「カラー革命」を模倣したアサド政権への攻撃が活発化した2005年にも用いられてきた。

 最近でも、チュニジアなどの政変を受け、face book 等を通じた蜂起の扇動は、1月半ばから盛んに行われてきた。3月以降でも、3月26日を「全国一斉の」人民蜂起の日と称する扇動、4月1日を「殉教者の金曜日」と称する一斉抗議行動の扇動が熱心に行われ、シリア国外在住者が主力と思われる、数万人がこれに賛意を表明した。しかし、こうした日々にシリア国内で実際にどの程度蜂起や抗議行動が起きたかというと、発生箇所は「全国規模」には程遠く、抗議行動側に最も好意的な報道を参照したとしても、face book 上の賛同者の数に遠く及ばない動員しか実現しなかった。現在の状況は、3月31日付のレバノン紙「ナハール」が論評したように、政権側の対応云々ではなく、抗議行動を扇動する側の動員能力が試されている状況である。(つづく)
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