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2011-02-15 19:55
(連載)「スマートパワー時代の日米関係」に参加して(1)
藤本 厚
あかう代表取締役
2月14日開催されたグローバル・フォーラム等共催の標記「日米対話」において、「尖閣列島問題の結果、日本における日米同盟の重要性の認識が高まった。ハードパワーの重要性についての認識が高まった。これで日本も憲法改正などの法整備ができる」というご意見が出されましたが、その点に関連して拙見を申し述べます。私は、これは正にそのとおりであり、特に集団的自衛権行使の可否が曖昧な状態では日米同盟は十分に機能し得ないことはよく理解できます。しかし、国政の現状をみると、必要な法整備がすぐにできるかは、まったく予断を許しません。そこで、法整備の問題は一応脇に置いておいて、日本が永年主張し米国も合意している日米同盟における「equal partnership のあり方」について、意見を述べます。
日米同盟において日米が 「equal partner」であるためには、日本はまずハードパワーの面でもっと貢献できるはずであり、また貢献しなければならないと考えます。その一つの方向は 「Cyberdefence」です。ここでは「Cyberdefence」を「Cyberattack」に対する防御のシステムと定義します。昨年ブラジルの発電所に大量データやヴィールスが送りつけられ、その地域は数日間停電しました。また、ウィキリークスのように国の機密データを盗むものもあります。特に前者はコンピュータシステムを一定期間麻痺させる力を持っていますから、まず「Cyberattack」により軍事施設、電力・経済を一定期間麻痺させれば、核による報復を恐れずに、核攻撃ができます。これは核の抑止力がなくなることを意味します。このような可能性を防ぐために、日本が独自で、また米国と協力して「Cyberdefence」の力を持つことが、自衛のために、また核戦争抑止のために役立つと考えます。
「Cyberdefense」は専守防衛で、一人の人間も殺しませんし、軍事的防衛だけでなく社会全体の防衛と密接につながっていますから、現行法上も問題がなく、直ちに着手できると考えます。『Foreign Affairs』誌の2010年11-12月号によれば、米国ではこのような「Cyberdefence」の開発にすでに着手したと伝えています。日本は独自で、また米国と共同で、直ちに「Cyberdefence」の開発に着手すべきであると考えます。
ソフトパワーの面では、日本は途上国のためには「Free Trade」に代えて「Fair Trade」を主導概念として確立すべきであると考えます。「Free trade」でなく「Fair trade」をという考えは、既にNPOを中心に広がりつつあります。「Free trade」あるいは「Free competition」ですと、強者は生き残るために弱者を搾取することにならざるを得ません。国内では公正取引委員会やいくつかの政府機関によって「強者による弱者の搾取」を防ぐ努力がなされていますが、国際的にはそれがなく、途上国の人々が搾取される状態が続いています。私は、その不満が、かつてはIMF世銀の年次総会の際の大きなデモに現われ、2001年には9.11が起こり、その後のイスラム原理主義の跋扈に通じていると考えます。この紛争は、宗教の違いから起因するというより、経済的な不満に起因していると考えます。そこに中国が付け入る隙があります。(つづく)
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(連載)「スマートパワー時代の日米関係」に参加して(1)
藤本 厚 2011-02-15 19:55
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藤本 厚 2011-02-16 09:42
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