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2010-12-17 11:00
(連載)ウキリークスの刑事責任を問うことはできない(1)
島 M. ゆうこ
エッセイスト
最近、ウキリークスの創始者ジュリアン・アサンジとウキリークス組織に対する風向きが強くなってきている。膨大な外交公電文書の極秘情報がウキリークによってネットを通して一般公開された事件直後、アサンジは偶然にも同じ時期に、関連性の全くない複数の女性に対する性的事件の容疑で、イギリス当局に身柄を16日まで拘束された。スウェーデン当局は、アサンジが犯したという性犯罪を公式に発表していないため、また、本人もこの容疑を否定しているため、「政治的動機」に基づいた罠であるとして、アサンジの無実を信じ、彼を支持する声も多い。同時に、アサンジに対して何らかの刑罰を望む声も多く、ウキリークスに反対する動きも目だってきている。
すでに、ビザ、マスター、ペイパァルなどのクレジット会社は契約違反という理由で これらのカードによるウキリークスへの寄付金の送金をブロックした。また、アマゾン・カムや他のウエッブ・サイトもウキリークスとのビジネス関係を絶つことを公表している。一方、アサンジと彼の組織は、このような圧力にひるんだ様子はみせず、例えアサンジが暗殺されるような事態が起きても、組織は「秘密情報を暴露し続ける」と強気の姿勢をみせている。事実アサンジは「次の大きなターゲットは、アメリカの金融業界だ」と言っている。本人がどのような運命にあろうと、すでに金融業界の裏情報はウキリークス組織の手に渡っており、秘密情報を世間に提供することを阻止することは不可能なほど、ウキリークスは強力な組織体制を整えている。当然、秘密情報が漏れる前に、ウキリークスの動きを阻止したい米金融業界の動きも存在するだろうと考えても不思議はない。
ウキリークスほど「メディアの使命あるいは言論・報道の自由とは一体何か」を考えさせる組織は、これまで他に存在しなかったのではないだろうか。「市民は真実を知る権利がある」と信じて、この組織を支えている多くの人たちが、世界各地に存在する事実を見逃せない。彼らは、不正または秘密を暴露する人を意味する比喩として、ホイッスル・ブローアーと呼ばれている。彼等はその素性を知られることなく、秘密の情報を入手し、ウキリークスに提供しているのである。世界中にどうして、このような個人または組織が存在するのか、またこのような現実をどうみるべきか?その一端として、至難に直面したウキリークスの刑事責任問題を言論の自由との関連の側面から考えてみたい。
極秘情報を漏らした事件で、米政府は現在も、アサンジをスパイ法違反の容疑で刑法違反として、犯罪捜査の可能性を検討中である。この点について、彼を犯罪者にしたてることは、幾つかの点で難しいと考える。まず、ウキリークスは、身元不明の人物から約25万の機密外交公電文書を入手したが、公表する前に米国務省にそれらの情報を入手したことを知らせ、リダクションの検討を求めている。つまり、個人名称や住所を含め、どのような情報を削除したらいいかを相談している。しかし、国務省はこれに対し、一切返答をしなかった事実がある。政府の機密情報を世間に暴露することに協力はできないとして、無視したものと思われる。しかし、無視されても交渉を試みたアサンジの複数の手紙の内容は、マスコミが掌握している。12月5日付けの『ワシントン・ポスト』紙は、アサンジがその2回目の手紙で「ウキリークスは、個人にリスクを負わせたり、アメリカの安全保障を脅かす意図は全くない」と繰りかえし述べ、「国務省がリダクションについて討議することを拒否したことで、アサンジが想像しているほどリスクはないものと解釈し、ウキリークスの判断でリダクション処理を行う」としたニューヨークの弁護士および記者のバルーク・ワイスの記事を掲載している。(つづく)
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