ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2010-07-23 10:49
(連載)スーダンPKOへの陸自ヘリ派遣断念の意味(1)
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
アフリカのスーダン南部における国連平和維持活動(国連スーダン派遣団=UNMIS)への陸上自衛隊のヘリ部隊の派遣が、結局、見送られることとなった。政府は、国連などの打診を受けて、来年1月に南部スーダンの独立をめぐって行われる予定の住民投票を支援するため、陸自のヘリコプターで投票箱などの輸送を行うことを検討していた。しかし、日本政府は、スーダン内陸部までヘリを陸上輸送することの困難さや安全面の問題を理由に、派遣を断念したことを7月13日に発表した。
スーダンでは20年以上にわたって南北間で内戦が続いていたが、2005年に包括和平合意が成立した。国連はこれに基づく今年4月の大統領・議会選と来年の住民投票の円滑な実施を、スーダンの民主化や安定の促進の試金石と位置付けてきた。UNMISが展開するスーダン南部は道路事情が悪く、投票箱などの空路輸送が不可欠である。この任務に必要な大型ヘリは主に先進国が所有するが、NATO諸国を中心に、その多くがアフガニスタンで手一杯である。そこで、これまでのところインドが主要な派遣国となってきた。しかし、そのインドも国内テロ対策を理由に段階的撤収を国連に通告している。
国連は、大型ヘリを拠出できる数少ない国の一つとして日本に期待しており、昨秋には潘基文事務総長が日本政府にヘリの派遣を要請していた。そして、日本政府が今年5月に調査団をスーダンに送ったこともあり、国連内では期待が高まっていた。したがって、今回の見送りに対して、国連当局内では失望が広がっている。例えば、国連当局者は「他の国は同じ条件下でやってきた」と日本が派遣を断念した理由の薄弱さを指摘しているとのことである。また、日本の対応には、テロとの戦いの観点から国連だけではなく米国も注目してきた。スーダンの不安定が続けばテロの温床となりかねないからである。
政権内では、日米間の信頼関係を高める観点などから岡田克也外相が派遣の重要性を指摘してきたのに対し、北沢俊美防衛相は安全性のほか、活動の困難さやコストの割に国際社会へのアピール度が高くないことも理由に挙げて、派遣に反対した。両者の言い分には、実はどちらにも一理ある。(つづく)
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
(連載)スーダンPKOへの陸自ヘリ派遣断念の意味(1)
高峰 康修 2010-07-23 10:49
┗
(連載)スーダンPKOへの陸自ヘリ派遣断念の意味(2)
高峰 康修 2010-07-24 13:53
一覧へ戻る
総論稿数:4819本
グローバル・フォーラム